理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-O-15
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一般口述発表
筋炎患者における嫌気性作業閾値と6分間歩行距離
長島 正明近藤 亮赤津 嘉樹永房 鉄之美津島 隆江西 一成
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抄録
【目的】 皮膚筋炎および多発性筋炎は近位筋の筋力低下が亜急性の経過で進行し,主に皮膚や肺病変を伴う代表的な全身性の自己免疫性筋疾患である.先行研究では慢性期の筋炎患者に対する全身持久力評価のための運動負荷試験の有用性が報告されている.しかし,急性期治療後,病勢が安定し自宅退院に至る筋炎患者において,全身持久力評価は日常生活を営む上で重要と考えられるが,その報告は少ない.さらに6分間歩行距離(以下,6MWT)は,呼吸器疾患や心疾患において最大酸素摂取量と有意な相関があることから全身持久力指標として用いられているが,筋炎患者では調査されていない.今回,我々は筋炎患者に対する6MWTの評価有用性を明らかにすることを目的とし,退院時の筋炎患者に対して嫌気性作業閾値および6MWTを測定するとともにその関係性を調査した.【方法】 対象は当院入院し今回初めて筋炎と診断されリハビリテーション科を受診した患者で測定が可能な6名であった.測定は退院前1週間以内に実施した.嫌気性作業閾値は呼気ガス分析装置および自転車エルゴメータを用いランプ負荷とし,V-slope法にて決定した.6MWTは30mの折り返し歩行とし,最大歩行距離を測定した.統計学的解析はSPSSを用いてpearsonの相関係数を求めた.有意水準は危険率5%未満とした. 対象者特性は年齢46±10(33-59)歳,全例皮膚筋炎患者であり,性別は男性1名女性5名であった.身長は158±10cm,体重49.8±10.7kgであった.入院時血清クレアチンキナーゼは3350±4255(198-11290)IU/L,退院時血清クレアチンキナーゼは129±158(36-419)IU/Lであった.退院時の内科的治療は2例がステロイド内服30mg/日,2例がステロイド内服25mg/日,1例がステロイド内服30mg/日+ネオーラル100mg/日,1例がステロイド内服30mg/日+メソトレキサート12mg/週であった.在院日数は78±14日であった.退院時ADLはBarthel Indexで全例100点であった.【説明と同意】 対象者には本研究の趣旨,情報管理および結果の公表に関して,口頭で説明し文書にて同意を得た.本研究は浜松医科大学倫理委員会の承認を得て実施した.【結果】 嫌気性作業閾値は11.9±2.2(8.7-15.0)ml/kg/min,6MWTは526±79(420-618)mであった.嫌気性作業閾値と6MWTは有意な相関を示した(r=0.86 p=0.029).【考察】 嫌気性作業閾値は日本循環器学会が定める換算基準値16.1±0.4ml/kg/minを大きく下回った(比率;74%).6MWTは高齢者の距離(500-550m)と同等であった.筋炎患者における身体機能低下の要因はいくつかある.主観的筋症状や治療者の勧めによる2次的なライフスタイル,入院に伴う活動量の低下,筋炎に合併する心筋炎や肺症状,炎症とステロイド治療に伴う萎縮などである.Wiesingerらは肺機能正常,心機能正常の慢性期筋炎患者において,嫌気性作業閾値は同年健常者に比べ55%であったと報告している.本研究の対象者もスパイロメータでの肺機能は正常,重篤な心機能低下を認めなかったが,嫌気性作業閾値は同年比74%であった.先行研究に比べ高い比率は,疾患コントロールされるまでの期間,評価測定の時期,リハビリテーション内容やステロイドミオパチーの影響の違いが要因として考えられた.また,本研究の対象者は退院時にADL低下は認めなかったが,嫌気性作業閾値や6MWTは低下していた.嫌気性作業閾値や6MWTの低下は,退院後の手段的ADLや余暇活動などに影響を及ぼす可能性があり,今後これらとの関係を評価することが重要である. 一般的に呼気ガス分析を用いた運動負荷試験は全身持久力を評価する上で最も標準的な方法とされている.嫌気性作業閾値を基準として6MWTを測定したところ正の相関を認めたため,6MWTは身体能力を捉える上で有益な評価であると考えられた.全身持久力と6MWTの関係性は多く報告されており,特に呼吸器疾患や心疾患において全身持久力を推測する一手段として6MWTが用いられている.筋炎患者における両者の相関は末梢骨格筋の傷害が直接的に6MWTおよび全身持久力を低下させた結果と考えられた.本研究で6MWTが全身持久力を推測する可能性が示唆されたが,対象者は少数でありより大きな調査が必要である.【理学療法学研究としての意義】 筋炎患者に対する6MWTは身体能力を捉える上で有益な評価である.6MWTから全身持久力を推測できる可能性がある.
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© 2013 日本理学療法士協会
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