理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-21
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ポスター発表
脊椎圧迫骨折患者の歩行能力低下に影響する受傷前因子の検討
八木 宏明砥上 恵幸中村 勝富永 俊克松島 年宏城戸 研二
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抄録
【はじめに、目的】脊椎圧迫骨折患者に対する理学療法は、骨折型が安定している場合、離床を目的に入院後早期に開始されるが、骨折を機に歩行能力が低下する症例を少なからず経験する。理学療法初期評価では、体動時痛のために、下肢筋力やバランス能力に代表される身体機能を正確に評価することは困難であり、問診による受傷前の歩行やADL能力の把握、入院診療録からの各種検査結果や既往歴などの情報収集が中心となる。本研究では、脊椎圧迫骨折患者の歩行能力低下に影響を及ぼす受傷前の因子について検討し、理学療法開始時のスクリーニングの際のポイントを見い出すことを目的とした。【方法】2010年1月から2011年12月に脊椎圧迫骨折の診断にて、当院に入院し、保存療法が施行され、自宅復帰となった、60例(男性:22例、女性:38例、年齢:77.1±9.1歳)を対象とした。受傷前と退院時の歩行能力を比較し、同等となったものを到達群、低下したものを非到達群の2群に分類した。2群間において、年齢、性別、要介護認定の有無、痴呆性老人の日常生活自立度判定基準、受傷前の歩行補助具使用の有無、入院前のBarthel Indexの項目のうち、歩行、階段昇降の点数、生活習慣病の有無、骨粗鬆症治療薬使用の有無、入院直近時の血清アルブミン値、脳血管疾患および心疾患、高齢者に多い骨折(大腿骨頚部骨折・上腕骨近位端骨折・橈骨遠位端骨折)の既往の有無、椎体骨折数を検討項目として比較した。椎体骨折数については、入院時の単純レントゲン写真より判定し、1椎体のものを初発骨折、2椎体以上のものを多椎骨折と分類した。脊椎圧迫骨折の判定基準は、日本骨代謝学会の診断基準に従った。統計処理は、R.2.8.1を使用し、統計学的手法は、Shapiro-Wilk 検定にて、正規性について分析し、正規分布に従っている場合は、等分散性を確認し、Welchの補正による2標本t検定を、正規性が確認できない場合は、Mann-WhitneyのU検定を行った。また、名義尺度間の比較には、χ2乗検定を行った。有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は、ヘルシンキ宣言に沿い、当院の学術研究に関する方針ならびにプライバシーポリシーを順守して行った。【結果】比較検討に先立ち、両群間の在院日数に有意な差がないことを確認した。到達群は40例(男性:16例、女性:24例、年齢:75.9±9.3歳)、非到達群は20例(男性:6例、女性:14例、年齢:79.6±8.4歳)であり、年齢と性別に差は認められなかった。椎体骨折数の比較では、到達群は初発骨折23例(57.5%)、多椎骨折17例(42.5%)、非到達群は初発骨折5例(25.0%)、多椎骨折15例(75.0%)であり、非到達群に多椎骨折が多く認められた(p=0.02)。Barthel Indexの項目では、歩行(到達群:14.5±1.5点、非到達群:13.0±3.4点)(p=0.04)、階段昇降(到達群:8.6±2.8点、非到達群:6.0±4.5点)(p=0.02)にて有意な差が認められた。要介護認定の有無、痴呆性老人の日常生活自立度判定基準、受傷前の歩行補助具使用の有無、生活習慣病の有無、骨粗鬆症治療薬の使用の有無、入院直近時の血清アルブミン値、脳血管疾患および心疾患、高齢者に多い骨折の既往の有無には、有意な差はなかった。【考察】歩行や階段昇降能力の低下は、下肢筋力やバランス能力の低下を反映していると推察される。また、脊椎圧迫骨折が複数の椎体に及ぶと死亡リスクが高まるとの報告もあり、多椎骨折患者も同様に身体機能が低下していると考えられる。これらの患者では、予備能力が低く、骨折後の疼痛による臥床にて、さらに歩行能力が低下してしまう危険性があると思われる。脊椎圧迫骨折患者の理学療法では、開始時に、歩行能力、階段昇降能力、多椎骨折の有無についてスクリーニングを行い、歩行能力低下への対策が必要である。具体策には、消炎鎮痛薬などによる疼痛のコントロールを行いつつ、早期に離床を図ること、医師や看護師と歩行能力低下の危険性や疼痛の程度、活動状況などの情報を共有し、活動量を低下させないための取り組みが考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究において、脊椎圧迫骨折患者の歩行能力低下に影響を及ぼす受傷前の因子は、歩行及び階段昇降能力の低下、複数の椎体に及ぶ脊椎圧迫骨折が示された。理学療法の際には、これらの要因を用いてスクリーニングを行い、歩行能力低下の危険性がある場合には、特に、多職種にて早期離床を促し、活動性を向上させる取り組みが重要である。
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© 2013 日本理学療法士協会
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