理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-28
会議情報

ポスター発表
継ぎ足歩行検査における測定回数の影響
福井 龍太郎小山 総市朗伊藤 慎英田辺 茂雄
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに、目的】バランス機能は,安定した立位歩行動作の遂行に重要とされている.バランス機能の低下は,転倒の主要因とされており,要介護状態の一因として挙げられている.したがって,適切にバランス機能を評価する事は,転倒予防や要介護予防に重要と考えられる.臨床場面において,実施頻度の高いバランス機能検査として,Timed Up and Go test (以下,TUG)や継ぎ足歩行検査があげられる.TUGは信頼性,妥当性が認められており,実施方法も,先行報告間で一致している.一方,継ぎ足歩行検査も信頼性,妥当性が認められているものの,実施方法が先行報告間で一致していない.検査自体が練習となり,短期の運動学習効果が結果に含まれてしまう可能性も考えられ,検査の最適な測定手順を明らかにすることは重要な検討課題である.本研究の目的は,検査回数に伴う継ぎ足歩行検査測定値の変化を検討することである.【方法】対象は健常成人11 名(男性6 名,女性5 名,年齢30.6 ± 7.0 歳).既往に神経学的障害や筋骨系経障害,認知障害を有する者は除外した. 継ぎ足歩行の測定方法は,静止立位を開始肢位とし,開始の合図とともに,床面に引いたテープ上を一側のつま先に対側の踵を接触させ歩行させた.歩行中の上肢は自由肢位とした.測定時の口頭指示は,「今から継ぎ足歩行を行います.つま先と踵を確実に付け,出来るだけ速く行って下さい.連続12 歩付けた時の時間を測ります」に統一した.測定はストップウォッチを用いて,開始時点から10 歩目の接地までの時間を測定した.測定値は1/100 秒単位で記録した.測定は計4 回測定した.統計学的解析には,一元配置分散分析を用いて,Bonferroniの多重比較検定を行い(P>0.05),施行毎の級内相関係数ICC(1.1)を算出した.【倫理的配慮、説明と同意】本研究の実施手順および内容はヘルシンキ宣言に則り,倫理審査委員会の承諾後に開始した.対象者には,評価の手順,意義,危険性,利益や不利益,プライバシー管理,研究目的,方法を説明の上,同意書にサインを頂いた.【結果】測定値は1 回目4.65 ± 0.76 秒,2 回目4.40 ± 0.76 秒,3 回目4.39 ± 0.70 秒,4 回目4.36 ± 0.66 秒であった.施行毎に統計学的な有意差は認められなかった.級内相関係数は1回目と2回目0.80, 2回目と3回目0.87, 3回目と4回目0.97であった.測定回数を増やすことで級内相関係数は上昇した.【考察】施行回数毎の測定値に統計的な差は認めなかったものの,測定値は上昇傾向を示し,短期の運動学習効果が結果に含まれてしまう事が示唆された.また,測定を繰り返す事で,測定値の上昇は少なくなり,短期の運行学習効果を排除出来る可能性が示唆された.測定方法の信頼性に関して,過去の報告においては,同一日に継ぎ足歩行を2 回計測させた際のICC(1,1)は0.78 であった.本研究の結果も,1 回目と2 回目のICC(1,1)は0.80 であり測定方法は信頼できると考えられる.さらに,3 回目と4 回目のICC(1,1)は0.97 であり,臨床的には3 回目と4 回目を測定値として用いる事が望ましいと考える.本研究結果より,最適な継ぎ足歩行検査方法は,実計測前に2 回継ぎ足歩行検査の練習をさせる事で,初回の課題内容の理解不足や短期間の運動学習によって生じる,見変え上の継ぎ足歩行速度向上効果を排除でき,3 回目と4 回目の測定値を用いる事で適切にバランス機能の評価を継ぎ足歩行検査によって測定できる事が示された.この継ぎ足歩行検査方法によって継ぎ足機能の評価を行う事は,高い信頼性を有する為,非常に有益である.今後は,TUGなど既存のバランス機能評価方法との妥当性を検証する.【理学療法学研究としての意義】本研究によって, 継ぎ足歩行を測定する際は,最低3 回測定することで信頼性の高い結果が得られることが示された.この結果は, 継ぎ足歩行を用いてバランス機能を正確に測定する上で,大きな意義があると考える.

著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top