理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-28
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ポスター発表
自在曲線定規を用いた胸椎可動性および胸腰椎アライメント計測の妥当性
仲澤 一也石川 大輔鴇田 拓也小熊 大士
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抄録

【目的】近年、高齢者の脊柱後彎変形や可動性低下とQOLとの関連が報告されており、簡便な脊柱アライメントや可動性の定量的評価法が求められている。これまでに脊柱のアライメントや可動性を評価する手法として、X線画像、デジタルカメラ、スパイナルマウス、および自在曲線定規などを用いた計測が報告されており、X線画像と比較することにより妥当性が求められている。自在曲線定規は一般に安価であり、臨床で簡便に用いる事ができる計測法であるが、その妥当性に関する報告は特に胸椎について少ない。本研究の目的は、胸椎および腰椎のアライメントおよび胸椎可動性を、「自在曲線定規を用いて計測する方法」と「X線画像から求める方法」で比較することにより、自在曲線定規を用いた計測法の妥当性を検討すること、である。【方法】対象は、健常成人男性15 名であり、年齢23 〜46 歳(中央値33 歳)、平均身長173.1cm(160 〜180cm)、平均体重73.3kg(58〜93kg)であった。計測姿勢は、胸椎の中間位・屈曲位・伸展位の3姿勢とし、いずれも矢状面上で耳孔と大転子が同一垂線上となる様に規定した。自在曲線定規を用いた計測では、市販の60cm長のものを用いた。予め2 名の検者による触診にてC7 およびTh12 棘突起さらにL5-S1 間をマーキングした。その後、C7 〜Th12 棘突起〜L5/S1 間の脊柱カーブおよび各ランドマーク位置を方眼紙にトレースし、Milneらの方法を一部改変しC7 〜Th12 棘突起間より胸椎後彎角を求めθa1 とし、Th12 〜L5/S1 間より腰椎前彎角を求めθa2 とした。X線計測では、スロットラジオグラフィーにて矢状面全脊椎撮影を行い、デジタル画像処理ソフト上でC7 椎体下面とTh12椎体下面の延長線のなす角よりθb1 を求め、Th12 椎体下面とL5 椎体下面の延長線よりθb2 を求めた。さらに、それぞれの計測法における胸椎の屈曲位と伸展位の差から胸椎屈曲伸展可動域θa3 およびθb3 を求めた。胸椎後彎角の角度算出は、自在曲線定規およびX線において、それぞれ別の同一検者が行った。また、X線画像撮影は放射線技師1 名が行った。統計処理として、胸椎中間・屈曲・伸展の各姿勢における胸椎後彎角θa1 とθb1 の間、中間位における腰椎前彎角θa2 およびθb2 の間、および胸椎屈曲伸展可動域θa3 とθb3 の間において、それぞれPearsonの積率相関係数を求めた。有意水準は5%未満とした。【説明と同意】本研究の実施には、札幌円山整形外科病院倫理委員会の了承を得た。また、ヘルシンキ宣言に則り作成した説明書および同意書を用いて、事前に対象者へ目的や進行、結果の取り扱いなどについて十分説明を行い、同意が得られた者のみを対象とした。【結果】胸椎後彎角に関して、胸椎の中間位、屈曲位、伸展位におけるθa1 とθb1 の相関係数rは、それぞれ0.73、0.59、0.80 であった。腰椎前彎角θa2 とθb2 では相関係数rが0.56、胸椎の屈曲伸展可動域θa3 とθb3 では0.68 であった。いずれも有意な相関が認められた。【考察】本研究結果より、胸椎後彎角の計測において、自在曲線定規とX線像による計測の間にmoderateからsubstantialな相関が認められ、自在曲線定規による胸椎後彎角計測の妥当性が示されたと考える。過去の研究として、de Oliveiraら(2012)は我々同様に胸椎および腰椎の自然立位における後彎角および前彎角をX線画像と自在曲線定規にて評価し、相関係数が胸椎0.72、腰椎0.60 であったと報告しており、我々の結果と同等であった。一方、Bryanら(1989)は腰椎前彎角について同様の比較を行い、相関係数が0.30 と低い値であったと報告している。これは、胸椎の方が体表から後彎角を計測しやすい部位である可能性や、今回の調査で2 名により触診したため、ランドマークがより正確であったこと、姿勢を大転子と耳孔を基準に規定した事などが理由であると考えられる。また、今回規定した方法で計測した胸椎の屈曲伸展可動域においても0.68 という相関係数が得られ、胸椎可動性においても有効な評価法となり得ることが示唆された。しかし、胸椎屈曲位での相関はやや低く、屈曲位の測定姿勢も含め、更に臨床的に簡便かつ妥当性の高い計測方法へ調整することが望まれる。【理学療法学研究としての意義】自在曲線定規を用いることで、簡便に胸腰椎アライメントや胸椎可動性の評価が妥当性を持って行え、X線画像による評価が難しい場面での脊柱アライメントの評価ツールとして有用であると考えられる。

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© 2013 日本理学療法士協会
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