理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-07
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ポスター発表
二重課題歩行における携帯電話操作課題と運動課題、認知課題との比較
大西 耕平下井 俊典丸山 仁司
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抄録
【はじめに、目的】高齢者の転倒要因の一つとして二重課題条件下での能力の低下が挙げられる。二重課題とは主課題と副課題からなり、二つの課題を同時にこなすというものである。対象者は二つの課題への注意を適切に配分しながら課題を遂行することが求められる。この二重課題を用いた転倒リスク評価法として、Stops Walking WhenpTalking testがある。これは、歩行中に話しかけられて立ち止まってしまう対象者では、転倒リス が高いというものである。簡便で、コストがかからないことから広く臨床で用いられている。しかし、このテストは歩行中に付加される会話という副課題の難易度が低いため、自立歩行者を対象とした場合、十分な精度が得られていない。自立歩行者を対象とした場合でも十分な転倒予測の精度が得られるよう、より複雑な副課題の設定が必要である。そこで、より複雑な副課題として、高齢者においても普及率が向上してきている携帯電話に着目した。副課題として携帯電話操作を用いたものは少なく、従来から用いられている課題と比較したものはない。今回は高齢者よりも身体機能の高い若年者を対象に、携帯電話操作課題と従来から副課題として用いられている運動課題、認知課題を比較した。さらに、注意機能の面からの検討も加えた。本研究は二重課題歩行における副課題の相対的な難易度と注意機能との関連を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は疾患の既往のない健常若年者21名(19.8±2.1歳、女性13名)とした。歩行測定は、開始地点から16m先の終了地点までの自由歩行を指示し、その中央10mの時間をデジタルストップウォッチで測定した。これを課題を与えない自由歩行、および4条件の副課題を与えた二重課題歩行をランダムに実施した。副課題はトレイに乗せたボールを落とさずに運ぶという運動課題、100から連続で7を減算する認知課題、歩行中の着信に対し受信操作を行わせる着信課題、歩行中に野菜の名前を可能な限りメールに打ち込むというメール課題を用いた。携帯電話はF-08C(富士通株式会社製)を用いた。測定条件として、着信課題では携帯電話はストラップにより首からかけた状態に、メール課題では携帯電話を手に把持した状態とした。各課題下での歩行時間と、課題なしの自由歩行時間との変化率を算出し、比較した。統計解析は、統計解析ソフトSPSS Statics19を用いて、反復測定による一元配置分散分析および多重比較検定(Tukey-Kramer法)を行った。また、注意機能の評価として仮名ひろいテスト(無意味)を実施し、正答数を求めた。各課題の変化率と注意機能との関連を分析するため、Peasonの積率相関係数を算出し、有意性の検定を行った。いすれの解析も有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究はヘルシンキ条約に基づき、研究開始に当たり対象者へ文書と口頭にて十分な説明を行い、文書での同意を得た。【結果】各課題での平均変化率は運動課題9.1±9.7%、認知課題22.9±14.0%、着信課題13.5±10.8%、メール課題27.1±10.7%であった。各課題間の比較では、認知課題、メール課題が運動課題、着信課題よりも有意に変化率が大きかった(p<0.05)。運動課題と着信課題間、認知課題とメール課題間には有意差を認めなかった。各条件と仮名ひろいテストの正答数はいずれも有意な相関関係を認めなかった。【考察】本研究では運動課題‐着信課題間、認知課題‐メール課題間においては有意な差がみられなかったことから、着信課題は運動的な側面が、メール課題は認知的な側面が強い課題であると考えられる。加えて若年者においては、携帯電話の使用の有無に関わらず認知的な課題を付加した方が、運動的な課題を付加するのに比べ難易度が高いことが明らかとなった。身体機能の高い若年者では運動的な課題に向ける注意量は少なく、歩行に与える影響も少なかったものと考えられる。しかし、注意の分配能力を反映する仮名ひろいテストとの関連が認められなかった。注意の分配能力は加齢とともに低下することがいわれており、若年者の注意分配能力を反映するには、仮名ひろいテストでは不十分であったことが考えられる。本研究結果より、若年者において携帯電話を用いたメール課題は、比較的難易度が高いことが明らかとなった。今後一般高齢者を対象とした場合でも携帯電話操作課題は従来の課題よりも難易度が高いと考えられ、より複雑な課題として有用であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】高齢者の二重課題歩行において、より複雑な副課題として携帯電話操作を用いることが有用であることが示唆された。今後は一般高齢者を対象とし、検討を行うことで高齢者の転倒予防に寄与できるものと考えている。
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© 2013 日本理学療法士協会
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