理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-08
会議情報

ポスター発表
回リハ退院後の転倒は客観的な評価項目から予測可能か?
~退院1か月後の追跡調査~
森 一樹北原 彰人西岡 洋平杉本 翔長政 祐生藤井 亜沙美永井 宏治三木 麻紀小林 憲人貞丸 聖子田原 光宏浅井 剛
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抄録
【はじめに、目的】回復期リハビリテーション病棟(回リハ病棟)では、障害の二次予防として、入院中や退院後の転倒予防が重要な課題となっている。回リハ病棟における入院中の転倒因子は、先行研究で検討されており、転倒リスク患者を抽出するためのスコアシートなども開発されている。しかし、回リハ病棟退院後の在宅生活における転倒因子は、あまり調査されておらず不明な点が多い。本研究は、退院前に退院後の転倒を予測する因子を抽出することができるのか検討することを目的とした。【方法】対象は平成23年7月~平成24年1月の間に回リハ病棟に入院され、かつ自宅退院された57名中アンケート調査の返信を得られた47名(男性16名、女性31名)であった。平均年齢は74.34±12.6歳、平均BMI22.03±2.7、疾患の内訳は脳血管疾患36名・運動器疾患7名・廃用症候群4名であった。ベースライン評価は退院1週間前に実施した。身体機能は、感覚障害の有無、Berg Balance Scale(BBS)、Timed Up and Go test(TUG)とした。認知機能は、高次脳機能障害の有無、Mini Mental State Examination(以下MMSE)とした。日常生活評価は、Functional Independence Measureの運動項目(m-FIM)・認知項目(c-FIM )、病棟移動能力(歩行自立群・自立困難群)、日中・夜間排泄能力(自立群・要介助群)、入院中の転倒の有無とした。その他に、担当セラピストが退院後に想定する介助量(想定介助量)をBarthel Indexの各項目で自立・要介助に分類してアンケートを実施した。退院後1か月間の転倒の有無は、入院中に退院後の転倒記録表を配布、また退院1か月後に郵送にてアンケート調査を実施することにより確認した。各評価項目について、転倒群と非転倒群の比較を、連続尺度の評価項目はt-検定で、名義尺度の評価項目はχ²検定を用いて分析を行った。統計分析はJMP7.0を用いて行った。統計学的有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、対象患者およびその家族に対して本研究の趣旨と内容について紙面と口頭にて説明を行い、書面に同意を得て実施した。【結果】退院後1か月間の転倒者は47名中13名(男性4名、女性9名)であり、全体の27.7%であった。平均年齢は75.00±11.5歳、平均BMIは22.14±2.4、疾患の内訳は脳血管疾患10名・運動器疾患1名・廃用症候群2名であった。転倒者と非転倒者を比較した結果、転倒者は感覚障害(鈍麻21名中7名、正常18名中1名、p=0.024)、病棟内移動が歩行自立困難(歩行自立33名中6名、歩行自立困難14名中7名、p=0.030)、日中の排泄が要介助(自立33名中6名、要介助14名中7名、p=0.030)、夜間の排泄が要介助(自立26名中3名、要介助21名中10名、p<0.01)、移動の想定介助量が要介助(自立36名中7名、要介助11名中6名、p=0.028)、移乗の想定介助量が要介助(自立39名中8名、要介助8名中5名、p=0.028)、入浴動作の想定介助量が要介助(自立27名中4名、要介助20名中9名、p=0.022)に多く有意な差を認めた。しかしBBS、TUG、高次脳機能障害の有無、MMSE、m-FIM、c-FIM、入院中の転倒の有無においては有意な差は認められなかった。【考察】65歳以上の地域在住高齢者では約20%が1年間に1度以上転倒を経験すると報告されている。しかし、本研究では27%が1か月間に転倒を経験されており、早急な対策が必要であることが確認された。先行研究において転倒の要因として挙げられていたBBS、TUGなどの身体機能、認知機能、転倒歴などは、退院後1か月間の転倒に影響しなかった。退院後の転倒は家屋状況や介護状況などの環境因子が強く影響するため、客観的な評価項目では転倒を予測することが困難であると示唆された。入院中の病棟内移動が歩行自立困難、排泄が要介助、移動・移乗・入浴動作の想定介助量が要介助において、転倒リスクが高い。これらの指標は、入院中のADLより担当セラピストを中心に病棟スタッフで検討され決定、想定される主観的な項目である。その為、回リハ病棟退院後の転倒を予防するには、同居者への介助の指導や、歩行自立・排泄自立のための環境設定に重点を置く必要があると考えられた。【理学療法学研究としての意義】退院後の転倒は、多要因であり今回測定した客観的な評価項目では捉えきれず、現在は主観的な指標が重要である可能性が示唆された。今後は、環境との関連を調査する必要性を感じた。
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© 2013 日本理学療法士協会
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