抄録
【はじめに】リハビリ施設基準に関し、各種装具の設置が義務付けられて以来、様々な長・短下肢装具の各サイズを常備し、脳卒中片麻痺には病態回復を見極めながら下肢装具処方が出来るようになった。また、オーダーメイド装具処方後は完成までの期間、仮装具として使用できリハ効率が以前より向上している。私共が捉える脳卒中の病院常備型下肢装具の条件は、体型差に応じた長さ、周径調節機能を有し様々な病態とその変化に対応できる可変式機能が1本の装具に備わった物と捉えている。なかでも、回復初期から膝関節制御による動的支持が比較的容易で、膝・股・骨盤帯への抗重力筋の連結を誘発しやすい機構が望ましいと考えている。今回、前述の条件と使用目的の便益性から標記装具を開発したのでその概要を紹介する。【方法】AD P.KAFO(Adjustable Plastic KAFO)は主に治療用装具として開発した病院常備型治療用下肢装具で評価用、仮装具としても使用できる。その特徴は、カスタムメイドのPlastic KAFO(P.KAFO)を原型とし、独自の下肢モデル製作とモールドにより開発した下腿長、下肢周径調節機能を有するプラスチック製の長下肢装具である。下肢モデルは年代別平均身長(男性18歳~74歳:172.2cm~163.7cm、女性18歳~74歳:158.9cm~151.4cm;政府統計、平成22年度体力・運動能力調査「年齢別体格測定の結果」)から試作し、その域内を網羅する装具伸縮調節を設定し男性仕様160cm~175cm、女性仕様145cm~160cmを決定した。構造特徴は、P.KAFO下腿中央で上下部に分割し、双方を下腿長調節シェルにより連結、シェル内のスライド機構により下腿長の伸縮調節を行う。また、大腿、下腿、足部周径調節は各々の専用インナーの着脱により可能。足、膝関節の制御は各々にC.C.AD Jointを使用し足継手二方向調節、膝伸展調節が任意に自在である。さらに、下腿長調節機構を取り外すとP.KOとP.AFOとして使用でき病態回復に応じた可変式機能も備えている。【倫理的配慮、説明と同意】本装具の改良開発は、原型装具の開発者との共同開発であり、改良製作業者にも発表主旨についての説明と同意を得ている。【結果】AD P.KAFO基本情報:適応身長は上述記載。下腿ストレッチ域男性仕様(男)36.0cm~41.5cm、女性仕様(女)31.5cm~36.0cm。周径と足長の目安は(男)大腿部:42cm~50cm、下腿部:30cm~38cm、足:25cm~27cm。(女)大腿部:38cm~45cm、下腿部:28cm~35cm、足:23cm~25cm。装具材質は男女共通でモルダーシート4mmを使用。重量は(男)P.KAFO:1,100g、P.AFO:350g、(女)P.KAFO:850g、P.AFO:320g。理学療法士による対象者への装着は最長1分47秒、最短55秒で装着も容易である。【考察】本装具の開発目的は脳卒中回復途上の病態に的確な装具を選択し、無駄のない処方を如何に行うかであり、回復レベルが未知な場合でも、いつの時期にどのような装具がベストな選択となるかの見極めに役立てたい。また、患者へのオーダーメイド装具処方は可能な限り簡素、軽量、安価、外観という理想概念に近づけるための物でもある。本装具の適応病期と病態は、回復期の歩行未完成期で特に膝折れ改善後の低緊張、低筋力、伸展共同運動要素での膝・股関節の荷重支持が不安定な病態に使用する。つまり装具使用に関し、長下肢装具にて膝ロック機構を用いた股関節歩行か、短下肢装具による膝の努力性歩行を選択するのか難しい時期と病期である。本装具は足二方向制御と膝伸展制動機能を有するため、片麻痺特有の伸展パターン歩行を誘発しつつ、膝を求心性伸展方向に制動する。即ち、膝の体重支持、推進支点と股・骨盤帯の推進力を同時に学習させる機構である。したがって、膝を中心とした抗重力機構完成までの治療用として使用し、可変式機能を用いてAFOへカットダウンする際の確認も可能である。他の適応疾患として、P.KOは変形性膝関節症、ACL損傷術後の関節保護。P.AFOは軽度片麻痺の内反・尖足、腓骨神経麻痺への一時的使用も可能と考えられる。【理学療法学研究としての意義】今回、開発したAD P.KAFOはカスタムメイドの物と同等の構造・機能・力学特性を持ち、臨床現場でもオーダーメイドの装具と遜色なく使用可能な物となった。これを病院常備品とすることで患者の自己負担がなくなり、理学療法士の装具製作に関わる煩わしい業務の削減もできる。また、間違った足・膝関節の角度設定にしても元に戻せることやカスタムメイドの装具製作時に評価用としても使用でき誤った装具処方の軽減につながる。よって、患者の経済的負担、理学療法士の装具離れの課題を打破できる物としての活用が見込まれる。