理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-21
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ポスター発表
HALを用いて効果が得られる症例の傾向について
照屋 修平辺土名 健一高江洲 昌太安里 優介貞松 徹又吉 達
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抄録
【はじめに、目的】 現在,全国的にもロボットスーツHAL(以下HAL)福祉用が普及しており,病期を問わず幅広い分野で使用されている.主に身体機能の改善や起立や歩行動作など基本動作の改善に用いられている.現在,HALを用いた治療効果や実績などの報告は増えてきたが,治療効果にばらつきがあり,どのような病態に効果的かどうかはまだ明確になっていない.当院では平成23年2月からHALを導入しており,これまでに全20症例行った.HAL導入当初は装着下で連続歩行などを行い,歩行動作全般の改善を目的に介入した.しかし,HALを装着することで動きづらさや疲労感が出現し,思うような治療効果が得られなかった.そこで我々は「起立時や立位時の重心移動」「歩行の振り出し」など改善させたい動作を明確にしてHALを導入し,HAL装着下で視覚的,聴覚的な介助や誘導を行う事で運動パターンを習得出来るようにしている.そしてHAL直後の動作練習や通常リハでも獲得した運動パターンを促通・反復することで機能改善や動作改善を図っている.今回,当院でHALを行った全症例を振り返った結果,HALによって効果が得られる症例の傾向が得られた為,考察を加え報告する.【方法】 対象は平成23年4月から平成24年10月までHALを装着して目的訓練を行った17症例(脳血管障害10例,脊髄疾患5例,神経筋疾患2例).調査方法として,カルテより「移動手段」「歩行自立度」「歩行パターン」「起立動作自立度」「高次脳機能障害の有無」「感覚障害の有無」「HAL使用回数」「HAL使用日数」の項目を抜粋し,更に「目的動作の達成」「即時効果の有無」「翌日以降の効果の持続」「フィット感」「装着中の動きやすさ」「装着後の疲労」「運動パターンの習得」などの項目を担当セラピストに対してアンケートを実施した.【倫理的配慮、説明と同意】 HALを使用するにあたって,本人と家族にHALの概要,適応,禁忌を含む治療の説明と治療データの使用承諾書の説明を実施し,署名による同意を得た.【結果】 全症例を通じてHAL使用頻度は1~2回/週,平均使用回数は6.3回となった.使用時間は疲労度を見ながら20分程実施した.「目的動作」を達成82.4%,達成出来ず17.6%,「運動パターン」を習得出来た症例76.5%,出来なかった症例23.5%,「即時効果」が出現した症例76.5%,出現しなかった症例23.5%,「翌日まで効果が持続」していた症例70.6%,持続しなかった症例29.6%,「装着後の疲労」を訴えた症例64.7%,訴えなかった症例35.3%,「HAL装着中に動きやすい」症例70.6%,動きにくい症例29.4%,「HALのフィット感」がある症例64.7%,フィット感がない症例35.3%,「高次脳機能障害」のある症例41.8%,無い症例58.8%,認知症のある症例11.8%,ない症例88.2%,「感覚障害」のある症例88.2%,ない症例11.8%,となった.「目的動作」を達成出来た全14例で共通していたのが「動作パターンの習得」「即時効果」「HAL装着中の動きやすさ」「認知機能」の項目で,動作パターンの習得出来た症例と即時効果が出現した症例は13例/14例(92.8%),認知機能に問題がない症例やHAL装着中に動きやすいと実感できた症例は12例/14例(85.7%)など高い傾向を示していた.一方,目的動作を達成できなかった症例で共通していたのはHAL装着時に動きにくく即時効果も出現せず運動パターンの習得も出来ていなかった.【考察】 今回,目的動作を達成できた症例で「運動パターンの習得」「即時効果」「HAL装着中の動きやすさ」「認知機能」の4項目で高い傾向を示していた.一方,目的動作を達成できなかった症例では「運動パターンの習得」「即時効果」「HAL装着中は動きやすさ」の3項目で該当症例がいなかった.HAL装着時に動きやすくなる為には適正なアシスト量を設定する事は勿論だが,セラピストが聴覚的や視覚的なフィードバックを行い,動作を介助・誘導することでHAL装着中も動作を行い易くして運動パターンを習得させるように工夫する事が重要になってくると思われる.目的動作を達成したにも関わらず,即時効果や翌日までの治療効果が持続していない症例も経験した.これらの症例に共通することは装着後の疲労感が強く,効果を打ち消していた可能性が考えられた.しかし運動パターンは習得しており,そのために疲労焼失後目的動作を獲得できたものと考える.よって今回の結果により,即時効果だけではなく,運動パターンを習得することで通常リハに活かす事が出来,HALの効果を持続させる事が可能となる.更に疲労を考慮し使用時間や使用回数が少なくても運動パターンを習得させる事で最終的には目的動作を達成する事が出来るのではないかと考えた.【理学療法学研究としての意義】 これまでHAL装着下での運動療法では治療効果にばらつきが見られたが,今回の結果により効果を出すための傾向が見出された.今後も症例数を重ねることでHALの使用方法や適応などが確立されてくるのではないかと思われる.
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© 2013 日本理学療法士協会
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