理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-S-04
会議情報

セレクション口述発表
膝後外側支持機構損傷のExternal Rotation Recurvatum testにおける後外側回旋不安定性の三次元動作解析
藤堂 庫治坂本 麻紀左座 正二郎松坂 達也馬目 知人山口 基
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに、目的】膝後外側支持機構(以下、PLC)は、膝外側側副靱帯、膝窩腓骨靱帯、膝窩筋によって構成され、直達外力による膝関節内反または過伸展で外旋力が加わって損傷されるが、単独損傷はまれで、膝前十字靱帯や後十字靱帯との合併損傷が多い。PLCの損傷は膝関節の膝後外側回旋不安定性を引き起こし、これを評価する方法の一つとしてExternal Rotation Recurvatum test(ERRT)がある。しかし、PLC損傷膝の不安定性に関する報告の多くは、屍体膝の靱帯切離前後の脛骨前方移動量および後方移動量、外旋角度の変化について解析されているが、膝関節運動中の不安定性に関する運動学的特徴を3次元的に調べた報告は少ない。今回、膝前十字靱帯損傷を合併したPLC損傷に対して、膝後外側回旋不安定性の運動学的特徴を明らかにするためにERRTを用いた三次元動作解析を行ったので報告する。【方法】対象は、23歳の男性、身長172cm、体重63kgである。診断名は膝前十字靱帯損傷、PLC損傷および内側半月板損傷である。受傷機転は、器械体操で膝関節完全伸展位のまま着地したことである。主訴は、不意に発生する膝くずれ現象と疼痛である。対象者をベッド上で仰臥位として、半円状枕の上に両膝を乗せて膝関節軽度屈曲位で安楽肢位とした上で測定側の大腿部を固定し、ERRTを両側に3回実施した。ランドマークは、膝蓋骨上縁上3cm、大腿骨外側上顆、脛骨粗面、腓骨頭とした。動画はカシオ社製EXILMを用いて撮影した。2台のカメラをそれぞれ三脚に固定し、膝関節側方の頭側と尾側に設置し、カメラスピード60fpsで撮影した。動作解析は、株式会社DKH社製Frame-DIASⅣを用いた。3次元DLT法で座標を算出した。周波数30Hzでデジタイズし、3点移動平均でフィルター処理された座標値を用いた。得られた座標値から、膝関節屈曲角度(Flex)、膝関節外旋角度(ER)を算出した。Flexは、膝蓋骨上縁上3cmと大腿骨外側上顆を通る直線と脛骨粗面と腓骨頭を通る直線のなす角度で算出し、健側初回最大伸展位を0度に補正し、屈曲を正の値で示した。ERは、大腿骨外側上顆、膝蓋骨上縁上3cmと腓骨頭による平面に対する法線ベクトルと、大腿骨外側上顆、脛骨粗面と腓骨頭による平面の法線ベクトルのなす角度を膝関節屈伸運動に伴う変化として定義した。開始肢位を0度とし、外旋を正の値で表記した。検討項目は、膝関節伸展運動に伴うFlex、ERに関する波形の特徴を視覚的に検討した。Flex、ERについては、開始肢位から膝関節0度まで、0度から最終伸展域までの運動範囲を算出した。【倫理的配慮、説明と同意】対象者より本研究の趣旨に賛同を得た上で、本研究は実施された。【結果】関節運動の波形を視覚的に検討すると、患側では膝関節0度以降の過伸展域で急激な膝関節過伸展と外旋運動がみられた。Flexの総運動範囲は、健側10.29±0.48度、患側22.00±2.65度であった。患側に11.97±2.94度の過伸展を認めた。ERの総運動範囲は、健側3.28±0.29度、患側11.32±1.69度であった。膝関節屈曲0度までの運動範囲は、健側3.28±0.29度、4.70±0.82度であり、膝関節屈曲0度以降に6.62±1.16度の外旋がみられた。【考察】膝関節伸展角度は、患側で約12度の過伸展を認めた。膝前十字靱帯もPLCも膝関節伸展強制は受傷機転に挙げられている。本症例の発生機転は膝伸展位での着地動作であり、この時、膝関節を強く伸展強制されたと推測される。患側は、伸展0度を超えた後に、急激な伸展と外旋がみられた。この結果から、後外側回旋不安定性は過伸展域に発生し、膝関節の急激な11.97度の伸展と11.05度の外旋が発生する現象といえる。【理学療法学研究としての意義】ERRTでの膝後外側回旋不安定性の運動形態を解明することで、症状発生動作で患部に発生する関節運動を推測することができ、効果的な運動療法や補助具療法を考案することができる。

著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top