理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-01
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一般口述発表
上肢支持が下肢の荷重制御の正確性に与える影響
渡邉 観世子谷 浩明樋口 貴広今中 國泰
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キーワード: 荷重制御, 上肢支持, 正確性
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抄録
【はじめに、目的】整形疾患術後患者に対する理学療法では、回復段階に合わせた荷重量を患側下肢に正確に負荷する練習が行われている。この練習では平行棒や杖の使用により上肢支持を伴うことが多いが、その効果として患側下肢への荷重を減少させること(Joyce BM, 1991)や姿勢の安定性を高めること(Milczarek JJ, 1993;Jeka JJ, 1994)などが報告されている。しかしながら、臨床現場では平行棒や杖への過剰な依存も目立ち、立位や歩行の自立を遅らせる弊害もみられる。そこで本研究では、上肢支持の有無が下肢の荷重制御の正確性にどのような影響を与えるかについて、効果的な面と弊害の両面から明らかにし、臨床における上肢支持の影響を考察することとした。なお本研究では、荷重制御課題でよく用いられる荷重量(体重の1/3、2/3)と荷重負荷の左右下肢を操作し、それらの要因とともに上肢支持の影響を検討した。【方法】上肢支持あり群24 名(男性13 名、女性11 名、平均年齢19.0(SD0.7)歳)と上肢支持なし群16 名(男性5 名、女性11 名、平均年齢21.7(SD3.6)歳)を対象として、平行棒内での片脚立位から反対側下肢へ目標荷重量を負荷し、その状態を3 秒間保持する下肢の荷重制御課題を行った。上肢支持あり群では大転子の高さに合わせた平行棒上に上肢を支持し、上肢支持なし群では上肢を体側に置いた姿勢で課題を実施した。課題の独立変数は、荷重量(体重の1/3、2/3)と荷重制御側の下肢(左下肢、右下肢)を対象者内要因とし、4 条件の課題を各10 試行実施した。課題遂行中、2 枚のフォースプレートにより3 秒間の下肢の荷重量変化を計測し、荷重変化が安定していた最後の1 秒間のデータから目標荷重量(体重の1/3、2/3)に対する偏倚性(CE/w)、変動性(VE/w)、総合誤差(RMSE/w)、および試行内変動(CV)を求めた。これらの各指標について群、荷重量、荷重制御下肢を要因とする3 要因分散分析を実施した。またCE/wでは、1 標本t検定を用いて目標値に対する偏倚の有意性を検定した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は所属機関倫理委員会の承認を受け(承認番号07-21)、対象者には研究目的と計測内容について口頭と紙面にて説明し、同意書への署名をもって同意を確認した。【結果】CVは、群間の主効果が有意であり(F1,38 = 79.5, p < 0.05)、上肢支持なし群よりもあり群で試行内変動が小さかった。CE/wでは、上肢支持あり群はすべての条件でundershoot(荷重不足)を示し、1 標本t検定の結果、右下肢1/3 荷重以外の3条件のundershootが有意だった(p < 0.05)。さらに分散分析の結果、群の有意な主効果(F1,38 = 15.7, p < 0.05)が認められ、上肢支持あり群がなし群より有意に低いCE/wを示した。また群×荷重量の交互作用(F1,38 = 6.2, p < 0.05)も有意で、上肢支持あり群では荷重量要因の有意な単純主効果が認められ、荷重量1/3 よりも2/3 で小さかった。VE/wでは、群要因を含む有意な主効果および交互作用は認められなかった。RMSE/wでは3 要因の有意な交互作用(F1,38 = 7.9, p < 0.05)が認められ、下位検定の結果、上肢支持あり群においてのみ荷重量×下肢の交互作用が有意で(F1,38 = 4.4, p < 0.05)、左下肢では荷重量2/3 より1/3 条件で、荷重量2/3 では左より右下肢でRMSE/wが小さかった。なお、上肢支持あり群の各条件における上肢支持量は、体重あたり7.6 〜17.0%であった。【考察】CVは上肢支持なし群よりもあり群で小さかったことから、上肢支持が荷重負荷のパフォーマンスに安定性をもたらしていることが分かった。しかしCE/wでは、上肢支持あり群のすべての条件でundershootを示し上肢支持なし群より正確性が低かった。さらに上肢支持あり群においてのみ荷重量要因の有意な主効果がみられ、小さな目標荷重に対しては超過し、大きな目標荷重に対しては不足するという、いわゆる中心化傾向が相対的な形ではあるが認められた。これらCE/wの結果から、上肢支持により、下肢に負荷すべき荷重の一部を上肢と支持側下肢が支持したことで顕著な荷重不足をもたらしたと推察される。またこの荷重不足は特に荷重量2/3 条件において顕著であったことから、大きな荷重負荷を練習する回復後期では、上肢支持により患側に充分な荷重負荷がかけられない、という弊害につながると考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果は、患側下肢の免荷や姿勢制御に貢献するとされてきた上肢支持が、荷重制御においては負の効果をもたらす可能性を示した。この結果は、臨床現場における杖や平行棒での上肢支持に対する指導に工夫が必要であることを示唆しており、たとえば指先のみでの軽い支持(Jeka JJ, 1994)の効果を参考にするなど、上肢に依存しすぎない効果的な上肢支持の方略を提案していく必要がある。
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© 2013 日本理学療法士協会
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