理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-P-06
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ポスター発表
腹部重錘負荷法が有する横隔膜移動距離の増大効果
田村 泰一下井 俊典丸山 仁司
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抄録
【目的】 横隔膜が平低化した症例は,横隔膜移動距離の低下に伴い呼気量が有意に低下している.また,平低化のない高齢者でも若年者と比べ,横隔膜移動距離や呼気量が低下している.呼気量が低下すると二酸化炭素が血中に貯留し,重症例になると死に至ることもあるため,横隔膜移動距離と呼気量の増大を図る必要がある.一般的な理学療法の臨床場面では,横隔膜移動距離と呼気量の増大を図る目的で腹壁呼吸や,徒手的に腹部に負荷を加える方法が用いられている.しかし,腹壁呼吸では腹筋が筋力低下している場合に腹圧を上昇できず,横隔膜移動距離や呼気量の増大が得られにくい.また,徒手的に負荷を加える方法では負荷量を調整できるが,治療者間や技術の差が出やすく,一定の効果が得られないという問題を有している.そこで,現在用いられている方法の問題点を改善するための新たな方法として腹部重錘負荷法がある.腹部重錘負荷法は本来,腹部に重錘を置き,負荷量の軽い0.5kgから負荷量の重い3kgまで徐々に負荷をかけていき,横隔膜を筋力強化して吸気量の増大を図る方法である.しかし,横隔膜移動距離が低下した症例に対して同方法を用いることで横隔膜移動距離が増大でき,呼気量を増大できる可能性がある.先行研究では,同方法による横隔膜移動距離と呼気量の増大効果について検討した報告はない.以上より,本研究では高齢者での同方法が有する横隔膜移動距離の増大効果,異なった負荷量による増大効果の違いについて検討することを目的とする.【方法】 現在または既往に呼吸循環器系の障害を持たない高齢者31名(男性29名,女性2名,年齢:67.9±4.0歳,身長:163.7±6.2cm,体重:62.7±8.6kg,喫煙者:6名)を対象とした.今回は横隔膜移動距離と安静時の呼気量を同時に測定することが困難であったため,横隔膜移動距離のみを測定することとした.測定肢位は背臥位とした.重錘は腹部に置き,負荷量は重錘負荷のない0kgと重錘を負荷した1~3kgの1kg刻みの4条件とし,順番はランダムに行った.測定手順は自然呼吸を2分30秒間行い,2分~2分30秒の間の横隔膜移動距離を超音波診断装置(日立アロカメディカル社 prosound α 7)にて測定した.測定には3.5MHzのBモード,コンベックス式プローブを用いた.プローブは右鎖骨中央からの垂線と中腋窩線との間の第6~8肋間に置き,背側の右横隔膜移動距離のみ測定した.各条件間には2分間の休憩を挟み,呼吸筋疲労の影響が出ないよう配慮した.横隔膜移動距離は超音波診断装置より得られた画像から2呼吸抽出し,測定点にマーキングして吸気終末と呼気終末の距離を算出した.統計学的手法は,横隔膜移動距離について負荷量を要因とした反復測定による一元配置分散分析にて統計処理した.分散分析の結果,主効果の認められた要因については多重比較(Tukey HSD)を用いて検討した.有意水準は5%未満とした.【説明と同意】 本研究の目的及び測定内容を説明し,参加の同意を得た.本研究の内容は,国際医療福祉大学研究倫理審査委員会,及び国際医療福祉大学病院倫理審査委員会の承認を得て行った.【結果】 横隔膜移動距離は,重錘負荷のない0kgと比べて重錘を負荷した1~3kgの全ての条件で有意に増大していた(p<0.05).しかし,重錘負荷量の違いによる有意差は認めなかった.【考察】 高齢者に対する腹部重錘負荷法は,全ての重錘負荷量において横隔膜移動距離を増大させる可能性が示唆された.同方法では,腹部に重錘を負荷することで腹筋の活動が補助され,腹圧がかかり,横隔膜移動距離が増大されたと考える.よって,同方法は横隔膜の平低化に伴い横隔膜移動距離が低下した症例や高齢者に対して,横隔膜移動距離を増大できることが示唆される.さらに,重錘負荷量の違いによる増大効果には差が認められなかった.加えて,負荷量の重い3kgでは本実験の中で吸気時に重錘が重く感じ,吸いにくいという意見も聞かれていた.したがって,負荷量の重い3kgよりも負荷量の軽い1kgや2kgを選択することで吸気時の不快感もなく,横隔膜移動距離を増大できると考えられる.以上より,高齢者に対する腹部重錘負荷法は横隔膜移動距離を増大できる方法として使用できると考える.また,個人差が出やすく,一定の効果が得られないという現在用いられている腹壁呼吸や徒手的な方法の問題点も改善できる可能性が示唆された.【理学療法学研究としての意義】 本研究は,横隔膜の平低化に伴い横隔膜移動距離が低下した症例や高齢者に対して横隔膜移動距離を増大させ,呼気量の増大を促す方法の一助となる.
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© 2013 日本理学療法士協会
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