抄録
【はじめに、目的】2011年3月11日の東日本大震災、その後の放射能被害により、福島県南相馬市は5228名の方が応急仮設住宅での生活を余儀なくされている(2012年5月現在)。仮設住宅居住者の生活不活発病が社会問題として取り上げられ、当院の支援活動として仮設住宅居住者に対し体力測定会の開催、運動指導に取り組んでいる。今回、初回と6ヶ月後の体力測定会の変化を比較、検討したため報告する。【方法】南相馬市の応急仮設住宅(2ヶ所、計268戸)に居住している満20歳以上の537名を対象とした。血圧、身長、体重を測定し、問診にて介護予防のための生活機能チェック(運動器5項目)、疼痛の有無、運動の関心度を聴取。体力測定、運動指導は「てんとう虫テスト(第一学習社)」を利用し2stepテスト、TUG(Timed up and go test)、FR(Functional reach test)、立ち上がりテスト(40、30、20、10cmからの両脚、または片脚立ち上がりテスト)を測定した。測定結果は各個人に説明し、併せて運動指導を行った。1回目は2012年4,5月、2回目は同年10月に実施した。【倫理的配慮、説明と同意】体力測定前に実施内容の説明を行い、同意書にて参加者の同意を得た。【結果】参加者数は1回目150名。2回目53名となった。うち1回目、2回目ともに参加された方は44名であった。1回目、2回目ともに参加した方の問診の結果は運動への関心度が有意に向上していた(P<0.05)。また、腰痛も有意に減少しており(P<0.05)、運動への関心度の向上と腰痛軽減に相関がみられた(P<0.05)。体力測定の結果は立ち上がりテストによる下肢筋力が有意に向上していた(P<0.05)。その他の測定項目には有意差は見られなかった。【考察】福島県南相馬市は人口7万人から震災後、避難により1万人に減少し、現在は約4万人となっている。そのうち子供とその子育て世代の減少が目立ち、元々2世帯、3世帯同居の世帯構成が多い地域であったが、高齢者のみの世帯が急増した。また、津波被害に加え、放射能被害により多くの人が仕事や住居、地域のコミュニティーを失った。家族の世話を役割としていた方、仕事をされていた方が職を失い、生きがいを失っている。体力測定会、運動指導はこうした方々をできるだけ活動的にする目的で取り組んだ。2回の測定会において両日ともに参加者している方の運動への関心度の向上、下肢筋力向上、そして腰痛軽減が示されている。体力測定会参加者の多くは日常的に集会所(日中は談話室となる)を利用しており、集会所での様々な団体による催し物や各種体操教室へ参加する機会が増えたこともあると考えられる。一概に今回の測定会のみの効果とは言い難いが、今回の測定会参加において、それらの活動に参加することによる自身の身体機能向上を主観的にも、客観的(量的)にも把握することができたことで、今後の各種活動参加への意欲を促進していると考える。今後は、測定会開催頻度などの開催方法等も検討し多くの方が参加できるよう検討していきたい。【理学療法学研究としての意義】被災地では現在も避難生活が続いている。体力測定会、運動指導は支援活動のひとつである。今回の結果より、これらの取り組みは一定の効果が期待できると思われた。しかし、閉じこもりやうつ、生活不活発病や慢性疾患の悪化など多くの問題が残されている。被災地では今後も継続した関わりが必要であると強く感じた。また、理学療法士としての支援活動は今後迎える高齢社会への対応に可能性を感じるものである。