理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-26
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ポスター発表
モジュラー式車いすを利用している脳卒中者の車いす駆動能力と移動距離の経時的変化
矢野 実穂萩原 章由松葉 好子今吉 晃前野 豊
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抄録
【はじめに】我々は、開院した当初から車いす上での活動もリハビリテーション(リハ)の一環と考え、急性期からモジュラー式車いす導入に際して、セラピストによる適合調整を積極的に行ってきた。適合調整に関する先行研究では、座位姿勢の変化についての症例報告はあるが、脳卒中者の駆動能力や活動量についての調査報告は少ない。本研究では、我々が急性期より適合調整した車いすを使用している脳卒中者の、車いす駆動能力の変化や当センターにおける車いす生活の移動距離を調査することを目的とした。 【当センターの車いす運用】第41回日本理学療法士学術大会で報告した通り、モジュラー式車いすを一人に一台、必要に応じて貸し出している。理学療法士(PT)は、利用者の体格から車いすの大きさを選定し、座位保持能力を評価して適合を調整しながら主に足駆動の指導を行っている。また、入院中は身体機能や駆動動作の変化、作業療法士(OT)からの情報、病棟生活での車いすの利用状況に応じて繰り返し適合調整を行っている。さらに、歩行が可能となるまでの期間は看護師と協力して車いすを利用した離床を積極的に促している。【対象と方法】2011/1/1~2012/8/31に発症し、当センターへ救急入院した後、回復期リハ病棟を経由し退院した脳卒中者のうち、発症後30日時点で車いすを利用していた67例を対象とした。なお重篤な合併症や精神疾患などの合併がある者は除外した。男性49例、女性18例、平均年齢64.3(±11.0)歳。疾患は脳梗塞31例、脳出血33例、くも膜下出血3例。障害名は右片麻痺32例、左片麻痺28例、両側片麻痺1例、失調症10例で、重複している障害例も含む。平均入院期間は135.6(±44.0)日、発症~車いす乗車開始までは7.3(±5.4)日であった。これら対象の発症後30日、60日、90日、120日、退院時の下肢随意性(Br. stage)、Berg Balance Scale(BBS)、Functional Independence Measure (FIM)、車いす駆動能力の変化、車いすの移動距離を後方視的に調査した。駆動能力は、車いすや人の往来が多い院内廊下(約20m)を目的地に向かって安全に駆動できるかをPTが評価し「自立群」、「一部介助群」駆動力不足、注意障害などの影響から一部介助が必要、「全介助群」の3群に分類した。移動距離の測定は、ブリヂストンサイクル社製emetersを用いて24時間計測した。【倫理的配慮】調査は当センターの倫理委員会の承認を得た。【結果】Br. Stageは発症後30日でIが1例、IIが5例、IIIが19例、IVが15例、Vが16例、VIが6例、検査困難が5例であり、120日または退院時で Iが1例、IIが2例、IIIが15例、IVが13例、Vが24例、VIが11例、検査困難が1例と大きな変化はなかった。BBSとFIMは30日でそれぞれ中央値が19.5(±15.4)点、60.0(±25.5)点で、120日または退院時で42.0(±16.8)点、101.0(±28.1)点と改善していた。駆動能力は30日で自立群が23例、一部介助群が20例、全介助群が24例で、120日までの経過の中で駆動が自立したのは47例、全介助は5例のみであった。移動距離は30日で自立群が平均1795.5(±855.2)m、一部介助群1536.8(±862.2)m、全介助群1065.0(±514.1)mであった。120日では自立群が2042.9(±776.2)m、一部介助群2200.0(±346.4)m、全介助群1320.0(±676.5)mと3群とも増加していた。なお、全例が60日の時点でモジュラー式車いすを使用していた。【考察】今回の結果からは、発症後30日から120日まで随意性に大きな変化はなかったが、BBSとFIMは改善しており、120日までの車いす利用の経過の中で67例中70%が駆動能力を獲得していた。駆動距離は、3群とも当センターでのADLに必要な距離の1,300mを上回っていたことから、PTが適切に調整したモジュラー式車いすは、脳卒中者の持つバランス能力を損なうことなく、入院生活の活性化を促したことが伺えた。また、OTや看護師と協力して、個々の能力に合わせてモジュラー式車いすの利用を進めたことが、FIMの改善に結びついたと考えられた。【理学療法学研究としての意義】 PTがモジュラー式車いすを個々の脳卒中者に合わせて適切に調整し、脳卒中者の機能を活かした駆動指導を行い、リハチームで環境を整えることにより、ADLにとどまらない入院生活全体の活性化を促すことが示唆された。
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© 2013 日本理学療法士協会
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