理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-19
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ポスター発表
人工膝関節置換術後患者の転倒者予備群に関する検討
身体機能を用いた臨床基準の作成
田中 友也美崎 定也古谷 英孝廣幡 健二西野 正洋佐和田 桂一坂本 雅光三井 博正西 法正杉本 和隆
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抄録
【目的】人工膝関節全置換術(TKA)、単顆置換術(UKA)は安定した術後成績を得ることができるが、固有受容器、筋力、バランス能力の低下があるとされている。そのため、身体機能低下が転倒を引き起こし、それにより骨折や脳外傷を招く可能性があると考える。我々は、先行研究においてTKA・UKA患者の転倒を調査し、転倒群は非転倒群に比べて身体機能が低下していることを報告した。しかし、非転倒群の中にも身体機能が低下している患者が見られた。このような患者の特徴を捉え、転倒予備群の判別ができることで、転倒予防指導時の一助になると考えられる。今回の目的は、転倒群の身体機能を外的基準として、非転倒群より転倒予備群を定義した後、身体機能に関してのカットオフ値を求めることにより、転倒予備群の臨床基準となりうるかを検討した。【方法】2006年~2011年にかけて当院でTKAまたはUKAを施行し、2011年9~12月に定期外来診察を受けた症例を対象とした。転倒の定義は、歩行や動作時に故意ではなく、床や地面もしくは膝よりも低い位置に手や殿部などの身体の一部がついた場合とした。測定項目は、基本属性として1)年齢、2)性別、3)BMI、自記式アンケートとして4)転倒に関するアンケート、日本語版WOMACの5)疼痛6)身体機能、7)日本語版Physical Activity Scale for the Elderly 、身体機能検査として8)股関節可動域(屈伸)、9)膝関節可動域(屈伸)、10)足関節可動域(底・背屈)、11)等尺性膝伸展筋トルク(膝伸展トルク)、12)開眼片脚立位時間、13)ファンクショナルリーチテスト(FRT)を行った。膝伸展筋トルクの測定は、ハンドヘルドダイナモメーター(アニマ社製μTas‐F1)を用いた。測定値は体重と下腿長にて標準化した値を採用した。統計解析は、転倒群と非転倒群をMann-WhitneyのU検定を用いて比較した。転倒予備群を定義するために、有意差が見られた身体機能項目を使用し、非転倒群をクラスター分析で3群に類型化し、外的基準となる転倒群と3つの非転倒群の間に一元配置分散分析(Dunnett法)を用いて身体機能項目を比較した。転倒群より有意に低い値を示した項目を持つ群を転倒予備群とし、その項目からReceiver-Operating-Characteristic曲線(ROC曲線)を用いてカットオフ値、ならびに検査の予測能を示すROC曲線下面積(Area Under the Curve:AUC)を算出した。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には本研究の目的を事前に説明し、同意が得られた者に対して実施した。【結果】評価とアンケートはTKA・UKA患者156名に対して行い、有効回収率は79%であった。対象者は123名(男性17名、女性106名、平均年齢71.9歳、平均BMI26.0kg/m2)となった。転倒者数は19名であった(15%)。群間比較の結果、非転倒群に比べ転倒群は膝伸展トルク、FRT、WOMAC身体機能が有意に低値を示した。非転倒者を3群に類型化し、転倒群より身体機能が劣る群(16名)を転倒予備群と定義した。この転倒予備群に含まれるカットオフ値は、膝伸展トルク:0.69Nm/kg(AUC:0.95)、FRT:26.5cm(AUC:0.94)、WOMAC身体機能:95点(AUC:0.93)となった。【考察】TKA・UKA患者の15%が転倒を経験していた。TKA患者の転倒発生率は、Swinkelsら(2009)は24.2%、Matsumotoら(2010)は32.9%と報告がある。先行研究に比べ、本研究の結果は低い値を示した。2群間の比較から、筋力・バランス能力低下により身体機能が低下しているTKA・UKA患者は、転倒を起こす可能性があると示唆された。転倒予備群は転倒群より膝伸展トルク、FRT、WOMAC身体機能に有意に低値を示した。転倒予備群の臨床基準として、ROC曲線より各項目ともに高いAUCが得られた。臨床では簡便な指標を選ぶことで転倒予備群の判別が可能であると考えられる。先行研究で、健常者を対象に行われている転倒リスクの調査では、石井ら(2006)は膝伸展トルクのカットオフ値は0.82Nm/kg未満、Thomasら(2005)はFRTのカットオフ値は18.5cm未満とした。本研究の結果より筋力は高値、FRTは低値を示した。転倒予備群は身体機能が劣っているにも関わらず、本調査で転倒は無かった。これは環境や活動量の要因によって転倒に及んでいないと考えられる。今後はこれらの因子を含めた転倒調査が必要であると考えられる。【理学療法学研究としての意義】本邦でTKA・UKA後患者の転倒を調査した研究が少なく、転倒や転倒予備群の実態を把握できていない。今後、転倒者や転倒予備群の特徴をとらえることにより、理学療法を進める際に必要な治療プログラムや日常生活指導を立案できる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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