理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-04
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一般口述発表
表面筋電図による中間広筋の新たな活動特性 膝関節屈曲動作に着目して
岡 恭正辻 貴之和智 道生野口 真一治郎丸 卓三金沢 伸彦
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抄録
【はじめに、目的】膝関節の安定化,姿勢保持には大腿四頭筋の役割が重要であるとされており,理学療法を施行するにあたり治療の鍵となる箇所である.近年では,高齢者においてこの筋群の筋力が将来の重度機能障害の発症率と密接に関係するとも報告されている(Manini,2007).なかでもその深層に位置する中間広筋の貢献度は大腿四頭筋全体の約50%にも達すると報告されている(Zhang,2003).しかしその中間広筋に関しては表面筋電図での測定が不可能とされてきたため,起始・停止の観点から機能を推測していることが多く,その機能は不明瞭である.そのなかで筋内筋電図を用いた研究によると,歩行時の股関節屈曲運動及び膝関節屈曲運動に中間広筋が筋活動を示したと報告されており,膝関節伸展運動以外の作用を有する可能性が示唆されている.そこで今回Watanabeらの報告で示された表面筋電図による中間広筋放電の導出方法に基づき,膝関節屈曲動作における大腿四頭筋(中間広筋,内側広筋,外側広筋,大腿直筋)の筋活動を記録し,中間広筋の新たな活動特性について検証した.【方法】対象は下肢・体幹に整形外科的疾患の既往のない健常成人20 名とした.測定筋は右側の大腿直筋(以下RF),内側広筋(以下VM),外側広筋(以下VL),中間広筋(以下VI)の4 筋とした.導出部位としてRFは上前腸骨棘と膝蓋骨上縁を結ぶ線の中央部位,VMは膝蓋骨上縁より筋腹に沿って4 横指部位,VLは膝蓋骨上縁より筋腹に沿って5 横指部位,VIは外側上顆より腸脛靭帯に沿って1 横指部位とした.なおVI導出に際しては超音波診断装置を用いてVI筋腹が表層に位置する部位を確認したうえ行った.表面電極は皮膚処理を十分に行い,電極中心距離は10mm,各筋線維方向に並行に貼付した.測定にはキッセイコムテック社製MQ16 を用いた.まず座位にて右膝関節屈曲60 度位における右大腿四頭筋の膝伸展最大随意等尺性収縮(以下,MVC:maximum voluntary contraction)時の筋活動量を計測した.筋活動量は付属のプログラムによって計算されたにより評価した.次に右膝関節屈曲0 度,60 度,120 度位における大腿四頭筋各筋の膝屈曲MVCより二乗平均平方工根(以下:RMS)を計算し,屈曲60°位での伸展MVCに対する割合(以下,%MVC)を計算して各筋間で比較検討を行った.測定は各3 回の平均値で5 秒間のMVCを実施し,間3 秒間のRMSを用いた.測定肢位はベッド上腹臥位とし,角度調整にはゴニオメーターを用い,徒手抵抗にて測定を行った.統計学的分析はSPSS12.0J を用いて角度変化を従属変数とし,大腿四頭筋各筋を独立変数とした反復測定における一元配置分散分析と事後検定(Tukey HSD法)を実施した.有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】研究に先立ち,個人情報保護法に基づき,対象に測定の趣旨および内容を十分に説明し,同意を得た上で測定を行った.【結果】膝関節屈曲0 度,60 度,120 度すべての角度において,VIがRF,VLに対して有意に高い筋活動を示した(p<0.05).また膝関節屈曲0 度,60 度,120 度すべての角度において,VIはVMに対して有意差を認めなかった.また,膝関節屈曲0 度,60 度,120 度すべての角度において,VMはRF,VLに対して有意差を認めなかった.【考察】膝関節屈曲動作において大腿四頭筋各筋に筋活動が認められたが,その中でもVIが優位に高い値を示したことについて,VIが膝関節屈曲運動に対して逆方向の関節トルクを発揮し,膝関節の運動を制御していると考える.VIは他の3 筋と比べ深層に位置するため骨との付着部も大きく,このような筋活動は深層筋が有するひとつの特徴的な機能ではないかと考える.またVIは大腿二頭筋短頭との筋連結も報告されており,その各筋の関係は筋膜を介して羽状筋のような形状を有している.このことから大腿二頭筋短頭と共同して膝関節屈曲運動に関与したと考える.日常生活の中で歩行・走行・立ち上がりなど膝関節運動を含む動作は頻繁に行われているが,RF及びハムストリングスなどの二関節筋が活動する中で,大腿二頭筋短頭及びVIが膝関節のstabilizerとして機能している可能性が示唆された.【理学療法学研究としての意義】表面筋電図を用いた結果からVIがRF,VLに対して優位に膝関節屈曲動作で活動することが明らかになり,VIが膝関節のあらゆる角度で屈曲作用を有する事が明らかになった.今後VIの選択的トレーニングの確立,動作におけるVI筋活動の検討,対象群との比較を行っていくことで,従来のリハビリテーションに対して新たな解釈を加えることとなり,有用な膝関節安定化エクササイズを提供することができると考える.
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© 2013 日本理学療法士協会
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