理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-O-03
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一般口述発表
地域在住後期高齢者における冠危険因子と血管内皮機能との関係
赤尾 圭吾浅井 千香子入谷 直樹石田 慎平萩原 悠太岩津 弘太郎河野 裕治犬塚 加菜郷原 将大加藤 正規木内 友里奈高木 大地村中 健太山田 純生
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抄録
【はじめに、目的】血管内皮機能障害は動脈硬化の初期病変とされ、心血管イベント発症のリスクになるとされる。また、血管内皮機能は、加齢をはじめとし、高血圧、脂質異常症、糖尿病、運動不足などの冠危険因子により障害されると報告されている。しかし、75歳以上の後期高齢者を対象として冠危険因子と血管内皮機能との関係を検討した報告はなく、後期高齢者の冠危険因子の保有が血管内皮機能にどのように影響するかは分かっていない。そこで、本研究の目的は、地域在住後期高齢者を対象として冠危険因子の有無および、冠危険因子の保有数の違いが血管内皮機能におよぼす影響を検討することとした。【方法】本研究では、2012年に名古屋大学医学部保健学科山田研究室にて実施した高齢者フィットネス健診に参加した75歳以上の地域在住後期高齢者113名(平均年齢79.4±3.5歳、男性33名)を対象とし、超音波診断装置にて血流依存性血管拡張反応を測定した。血管内皮機能の測定指標は安静時からの血管拡張率(%FMD)を用いた。また、冠危険因子の指標として血液生化学データ(総コレステロール(TC)、HDLコレステロール(HDL-C)、トリグリセライド(TG)、HbA1c)、家庭血圧、身体活動量(歩数)の測定を行った。冠危険因子の基準は、高血圧は家庭血圧が収縮期血圧135mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上、脂質異常症はLDLコレステロールが140mg/dl以上(TC、HDL-C、TGより算出)またはHDL-Cが40mg/dl未満またはTGが150mg/dl以上、糖尿病はJDS基準でHbA1cが6.1%以上、肥満はBMIが25.0kg/m ²以上、喫煙は現在および過去に喫煙習慣がある者、運動不足は1日平均6425歩未満(Togo, et al, 2005)とした。さらに、降圧薬、脂質改善薬、糖尿病治療薬の服用者は各冠危険因子ありとした。また、冠危険因子保有数0から2を低リスク群、3以上を高リスク群とし、両群の血管内皮機能の違いも検討した。統計解析は、各冠危険因子の有無および冠危険因子の保有数で群分けした低リスク群と高リスク群の血管内皮機能の差はMann-WhitneyのU検定で検討し、これらの検討は男女別に行った。統計ソフトにはSPSS16.0を用い、統計学的有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は名古屋大学医学部生命倫理委員会疫学研究専門審査委員会の承認を得た(承認番号:2012-0131)。また、全ての対象者には健診実施前に紙面および口頭で本研究の目的と内容を十分に説明し、同意を得た。【結果】%FMDの平均値は男性2.31±1.90%、女性2.62±1.97%、であった。各冠危険因子ありの対象者数は、高血圧89名(男性28名)、脂質異常症67名(男性16名)、糖尿病16名(男性5名)、肥満19名(男性6名)、喫煙18名(男性14名)、運動不足54名(男性14名)であった。高リスク群は63名(男性18名)であった。各危険因子の有無における血管内皮機能の違いでは、男性においては、高脂血症の有無(あり:1.61±1.02%、なし:2.96±2.30、p=0.037)ならびに冠危険因子保有数で(高リスク群:1.47±1.19%、低リスク群:3.31±2.13%、p=0.005)%FMDに有意な差を認めた。しかしながら、女性ではすべての冠危険因子の有無ならびに保有数で血管内皮機能に有意な差は認められなかった。【考察】本研究は地域在住後期高齢者のみを対象として、冠危険因子保有が血管内皮機能に及ぼす影響を検討した初めての報告と思われる。本研究結果は、後期高齢男性における冠危険因子は女性より男性において血管内皮機能に影響することを示唆しており、また後期高齢者全体的に、冠危険因子が血管内皮機能に及ぼす影響が少ないものである可能性を示唆している。本研究においては、この傾向は特に女性において顕著であり、後期高齢者の冠危険因子における血管内皮機能への影響には性差が存在する可能性も示唆された。【理学療法学研究としての意義】後期高齢者における動脈硬化進展予防方策には、従来の冠危険因子管理のみでは不十分である可能性があり、後期高齢者を対象とした健康増進研究には、栄養など、幅広い因子を含めた検討が必要になることを示唆している。
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© 2013 日本理学療法士協会
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