抄録
【はじめに】下肢筋力の簡便な測定法として台からの立ち上がりテストや30秒間椅子立ち上がりテスト(CS-30)などが提唱されている。しかし,下肢関節可動域制限を有する者には実施できない場合や負担が大きく他の身体評価を遂行することが困難な場合が多い。そこで,本研究では虚弱高齢者用の下肢筋力評価法として提唱されているFrail CS-10を幅広い年齢層で実施し,下肢筋力との関連を検討することにした。【方法】対象は74名(年齢:62.4±16.9,身長:158.8±10.8cm,体重:58.2±11.8)とした。その内訳は,男性19名(年齢:50.6±16.5,身長:172.6±8.5cm,体重:71.3±8.6),女性55名(年齢:66.4±15.1,身長:154.0±6.6cm,体重:53.6±9.1)である。測定はFrail CS-10,大腿四頭筋筋力を実施した。測定時には疼痛等による動作の制限が認められない状態で行った。FrailCS-10は測定時間を10秒とし,両上肢を胸の前で組み立ち上がり回数を測定した。ただし,立ち上がり途中で10秒経過した場合は回数に含めなかった。大腿四頭筋筋力は,アニマ社製等尺性筋力測定装置μ-tas F-1を用い,被検者を端座位,膝関節90度屈曲位として左右を2回測定し,左右それぞれの最大値の平均値(kg)を体重(kg)で除した値を膝伸展筋力体重比とした。統計学的分析は,Frail CS-10と膝伸展筋力との関係を男性群,女性群に分けスピアマンの順位相関係数を用いた。【説明と同意】本研究は医療法人社団SEISEN倫理委員会の承認のもとに,対象者には測定の目的および方法を十分に説明し,同意を得た者とした。【結果】全対象者74名のFrail CS-10と大腿四頭筋筋力との間にはrs=0.652と有意な相関が認められた(p<0.001)。男性群(n=19)においては,Frail CS-10と大腿四頭筋筋力との間にrs=0.527と有意な関係が認められ(p<0.05),女性群(n=55)においても両者の間にrs=0.651の有意な相関関係が認められた(p<0.001)。【考察】過去の研究では,簡易的な下肢筋力評価として台からの立ち上がりやCS30,FrailCS-10の報告がなされているが幅広い年齢層を対象としたFrailCS-10の報告はまだない。今回の結果から,幅白い年齢層を対象とした場合でも虚弱高齢者用下肢筋力評価FrailCS-10と下肢筋力との間には相関が認められ,下肢筋力評価の指標となり得ることが推察された。今後は対象者数を増やしFrailCS-10を適応できる対象年齢や利点・欠点などを明らかにする必要がある。【理学療法研究としての意義】 虚弱高齢者用下肢筋力評価法であるCS‐10が幅広い年齢層においても大腿四頭筋筋力との相関が認められた。臨床で立ち上がりテストという簡便かつ安価な方法で膝伸展筋力を推定できることは有用であると考える。