理学療法学Supplement
Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 0205
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口述
創傷治癒に対する運動療法は,M2型マクロファージを増加させ創傷治癒を促進する
川西 誠細江 さよ子仙波 恵美子
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抄録

【はじめに,目的】運動療法は,糖尿病や肥満,高血圧など生活習慣病の予防や改善を目的として広く一般的に行われおり,外科手術直後からの運動療法も一般的となってきている。また,動物実験において,創傷に対しても,運動により創傷治癒促進,炎症性サイトカインの早期減退効果が報告されている。さらに,創傷治癒過程でマクロファージは,炎症性のM1型と,抗炎症性に働き,創傷治癒や血管新生に働くM2型に分かれることが知られている。しかし,創傷治癒過程において,運動療法とマクロファージの極性変化や血管新生について報告した文献はない。【方法】動物は,雄のC57BL/6Jマウス(8週齢)を用いた。マウスはそれぞれ非運動群12匹と運動群12匹に分け,非運動群は飼育ケージ内での自発運動のみとし,運動群にはトレッドミル(夏目製作所)による走行運動を中等度の運動負荷(0.5km/h)で創作製翌日から30分,10日間行った。創傷モデルは,直径4mmのPunchを用いて作製した。試料採取は創作製1日,3日,6日,10日後の運動後に行った。組織はパラフィン包埋を行い,ミクロトームで創組織の中央,4μm厚の切片を作成した。創部の肉眼的観察はデジタルカメラで撮影し,Image Jソフト(NIH)を用いそれぞれの面積を測定した。そして,創作製時の創面積に対する割合を算出した。組織学的観察はHE染色を用いて行った。血管新生の免疫染色は,1次抗体にAnti-CD31,2次抗体にはrabbit anti-rat-IgGを用いた。光学顕微鏡,×200倍率下で1視野(0.14mm2)におけるCD31陽性細胞の面積の割合を測定した。マクロファージの極性変化は蛍光二重免疫染色法を用い検討した。1次抗体にRat,anti-F4/80 antibody,Goat,anti-CD206 antibodyを用い,2次抗体はそれぞれAlexa Fluor-594,Alexa Fluor-488標識をした抗rat,抗Goat IgG用いた。蛍光顕微鏡,×400倍率下で1視野(0.14mm2)におけるF4/80陽性細胞数と,F4/80陽性細胞に対するCD206陽性細胞数の割合を出した。統計はStudent t-testを用いて行った。統計学的有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本実験に用いたマウスは当大学の定める動物実験規程に従い取り扱った。【結果】創収縮の割合は,創作製3日後では非運動群69.9±1.3%(mean±SEM),運動群53.7±1.9%(p<0.001),6日後で非運動群47.4±2.1%,運動群31.4±2.4%(p<0.01),10日後で非運動群24.0±2.5%,運動群13.1±1.3%(p<0.01)と非運動群に比べ運動群で有意に創収縮が早かった。CD31陽性細胞面積の割合は,創作製1日後で非運動群0%,運動群0.80±0.1%であり,運動群で有意に増加した(p<0.01)。また,3日後では非運動群0.03±0.1%,運動群3.36±0.1%(p<0.01),6日後では非運動群2.25±0.3%,運動群4.28±0.2%と有意な差が見られた(p<0.01)。F4/80陽性細胞数は,創作製1日後で非運動群28.2±0.5個,運動群42.3±4.7個(p<0.05),3日後では非運動群62.3±5.0個,運動群79.3±1.0個(p<0.05)と運動群で有意に増加した。6日後,10日後では両群間で有意差は見られなかった。CD206陽性細胞数の割合は,創作製1日後では,非運動群0%,運動群25.4±1.9%であり運動群で有意に増加を認めた(p<0.001)。また,創作製3日後では,非運動群30.0±1.1%,運動群63.3±2.8%(p<0.001),6日後では,非運動群48.3±3.1%,運動群78.5±1.5%(p<0.05)と有意な増加が見られた。【考察】肉眼的観察ならびに組織学的観察において,運動群で創作製3日後,6日後で有意に治癒が促進していることがわかった。創作製1日,3日,6日後,運動群でF4/80陽性細胞に対するCD206陽性細胞が有意に増加した。これらの結果から,運動により治癒過程の早い段階からM2型マクロファージの割合が増加した。また,血管新生の割合についても創作製1日,3日,6日後において,運動群でCD31陽性細胞面積の有意な増加が見られた。これらの結果は,運動により血管新生が促進され,創傷治癒が早まった可能性を示唆している。M2型マクロファージは血管新生や創傷治癒にかかわるVEGFやTGF-β,FGFなどの成長因子を産生することが明らかにされており,今回M2型マクロファージの割合が運動群で早い時期から増加し,同時期に血管新生の割合も増加した。これらから,運動により治癒過程の早い時期からM2型マクロファージへの極性変化が起こり,これが,血管新生増加に関与している可能性が示唆された。今後,運動によるマクロファージの極性変化と血管新生の増加のメカニズムについて,更に詳細に検討していきたい。【理学療法学研究としての意義】本研究では運動により,M2型マクロファージ,血管新生の割合が増加し,創傷治癒を促進させた。リハビリテーションにおいて,手術や受傷直後からの運動療法が,創傷治癒の観点からもより効果的な治療法であることが示唆された。

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© 2014 公益社団法人 日本理学療法士協会
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