理学療法学Supplement
Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-0508
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口述
安静および等尺性収縮時における大腿四頭筋形態特性
大腿周径・羽状角・膝伸展筋力の関係
松岡 健西島 涼城戸 香織長和 伸治西田 裕紀
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抄録

【はじめに,目的】膝関節疾患は運動器疾患の中でも腰部(主に腰痛),肩痛(周囲炎,腱板等)に次ぐ多さで,日々の診療でも遭遇することが多い疾患である。またその障害像は多岐にわたり検査・測定方法も様々である。現在では超音波画像診断の進歩により侵襲も少なくリアルタイムで障害把握が可能なこともあり臨床場面でも多用され,報告も多くされている。我々も超音波診断装置を用い大腿四頭筋の周径・筋厚および羽状角とWBI(体重支持指数:weight bearing index)との関係,筋電図による大腿四頭筋各筋の角度特性について,膝伸展等運動性時の大腿四頭筋/ハムストリングス比について検証してきた。結果,表層筋(大腿直筋,外側広筋,内側広筋)と深層筋(中間広筋)で膝伸展運動における貢献角度に相違があること,特に中間広筋の重要性を示唆する結果がでている。しかしながらこれまでの検証は,中間広筋がより表層へ位置する大腿遠位部,また大腿長(大転子~大腿骨外側顆)50%位と限られた範囲のものであり,臨床で直面する動作遂行困難や,疼痛出現の要因解明には拮抗筋・周囲筋との関係性を理解することなど,大腿部形態特性も含めた解明が必要である。そこで今回は,安静時および等尺性収縮時の大腿部高位別大腿周径および羽状角の変化,と膝伸展筋力の関係について検証した。【方法】対象は下肢・体幹に整形外科的疾患の既往のない健常人男性14名(平均年齢は24.4±2.7歳,平均体重は69.7±10.9kg,平均身長は171.5±6.4cm)とした。膝伸展筋力測定にはハンドヘルドダイナモメーター(アニマ社製,等尺筋力測定装置μ-tasF-1)を用い,最大等尺性収縮筋力を測定した。測定肢位は端座位とし膝関節90度屈曲位,収縮時間は5秒間,測定は2回行い最大値を採用した。なお最大値を体重で補正した値を代表値として用いた。大腿周径は,膝関節裂隙を0%,大転子下端を100%とし,膝裂隙より20%位から80%いまでの間で10%間隔の計7ポイントにて測定した。測定は膝関節屈曲5度位とし安静時および50%MVC収縮時の2回行った。測定は1mm単位とした。羽状角測定には,超音波診断装置を使用し,Bモードにてプローブは10MHz,肢位は背臥位とし大腿周径測定と同一部位の大腿外側面上で行った。対象とした筋は外側広筋,中間広筋の2筋とした。なお測定に際しては,プローブを皮膚面に垂直に保持し,筋組織を圧迫しないよう皮膚に軽く接触させ記録した。統計処理はSPSSを用い,安静時および等尺性収縮時の大腿周径,羽状角比較には対応のあるt検定を,10%ごとの大腿周径,羽状角の関係については一元配置分散分析および多重比較,膝伸展筋力と各測定値との関係にはpearsonの相関係数を用いて検証した。有意水準は5%未満とした。【結果】安静時および等尺性収縮時の比較において,各部位で大腿周径に有意差は認めなかった。羽状角の安静時および等尺性収縮時おける比較では,外側広筋で80%位,中間広筋で60%,70%,80%位で有意差を認めた。安静時,等尺性収縮時それぞれでの測定各部位間における比較では,外側広筋羽状角は,安静時・等尺性収縮時ともに40%位のピークまで有意な増加を示し,大腿近位に向かい低値となる結果であった。中間広筋羽状角では,膝関節裂隙から20%位から40%位にかけて有意な減少を示し,それ以降,大腿近位に向かい有意な減少は認めなかった。膝伸展筋力との関係において,大腿周径・安静時外側広筋羽状角で相関を認めなかった。収縮時外側広筋30%,40%,50%と,安静時・収縮時中間広筋の30%以降の高位で中等度の相関を認めた。【考察】大腿周径において安静時,等尺性収縮時で変化はなく,各高位と膝伸展筋力との関係を認めなかったことより,大腿近位・遠位に関わらず筋力評価としての大腿周径測定意義を否定するものとなった。大腿周径は大腿近位に向かい徐々に増加すること,また外側広筋羽状角は40%位まで有意な増加を示し,中間広筋羽状角は40%位まで有意な減少を示すことより,この2筋間においては大腿遠位部における大腿周径値に外側広筋の貢献度が高いことを示唆する結果であった。ただしMRIによる大腿四頭筋各筋断面積の報告と,今回の羽状角ピーク値の結果では相違があり,羽状角と筋断面積との関係には今後の検討が必要である,膝伸展筋力と羽状角の関係においては,中間広筋機能評価の重要性を示すものであった。【理学療法学研究としての意義】羽状角と膝伸展筋力の関係において,大腿部の測定部位に関わらず有意な関係を示したことは,中間広筋の機能評価の重要性を示すものであった。今後は,筋断面積と羽状角との関係について検証を深めたい

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