主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【背景および目的】
術後の心臓リハビリテーション(以下心リハ)の目的は早期離床によるデコンディショニングの予防と体力回復、社会復帰や再発予防、予後の向上、ADL及びQOLの改善等があげられる。なかでも術前ADLの再獲得は重要な課題と位置づけられるが、複合疾患も含め検討したものは少ない。今回、心臓血管外科手術後、心リハ実施例において、術前後でのADLの変化を調査し、患者背景及びリハ進行状況について検討を行った。
【方法(または症例)】
患者背景因子として年齢、性別、身長、体重、BMI、術式、転帰を調査、術後のリハ進行関連項目として術後リハ開始日、リハ実施期間、術後在院日数を、ADL評価としてBarthel index(以下BI)をカルテより後方視的に情報収集を行った。対象は2010年12月~2017年3月に当院心臓血管外科へ手術目的に入院となった499名中、中枢神経障害等重症合併例、再手術例、死亡例を除き、術前後の評価が可能であった252名において調査を行った。退院時に術前よりもBIが低下したものを低下群、維持又は改善したものを対照群として比較検討した。
【結果】
低下群は全体の34%であった。低下群では対照群よりも高齢であったが、術前のBIは差はなかった。自宅退院率も低下群では13%、対照群では39%と有意に低下群で低い結果を示した。性別やBMI、術後のリハ進行関連項目において有意差はなかった。低下群、対照群共に術式における差はなかった。
【考察および結論】
術後の早期離床が図られたにもかかわらず、術前のADLを再獲得出来ていない症例を認めた。低下群は対照群よりも高齢であった。高齢者では生理的に運動及び精神機能の低下がみられることも多い。加えて運動習慣が欠如していることも多いため、運動時の過剰換気から運動中の呼吸困難を来しやすく、これが運動耐容能低下の一因に繋がっていると考えられた。そのため高齢になるに伴いADL能力においての予備力が少ないことが推測された。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に則って、個人情報の管理に十分に配慮し、患者情報を診療録より抽出した。また本研究は開示すべき利益相反関係にある企業はない。