主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【背景および目的】
高齢血液透析(HD)患者では加齢や日常の活動量減少による筋力低下が生じている.また,透析療法の継続による筋肉量減少や糖尿病合併の有無の影響が考えられる.そこで,本研究では高齢HD患者の筋力と筋肉量に影響を与える要因を調査した.
【方法(または症例)】
対象は65歳以上の外来HD透析患者177名(男性96名,女性81名).測定項目は膝伸展筋力(以下筋力,μTas F-1使用,アニマ社)と筋肉量(%クレアチニン産生速度)および検査値を調査した.統計解析は性別と糖尿病合併の有無の群間比較は対応の無いt検定を用いた.また,筋力,筋肉量と各調査項目でpearsonの相関係数を求め,筋力と筋肉量を従属変数とした重回帰分析を行った.
【結果】
全対象者で相関は筋力と筋肉量(r=0.33,p<0.001),血清アルブミン値(r=0.20,p=0.005),筋肉量とnPCR(r=0.26,p<0.001)で認めた.重回帰分析の結果では,従属変数が筋力では筋肉量(β=0.334)と年齢(β=-0.17)が(R2=0.142),筋肉量では筋力(β=0.30)とnPCR(β=0.22)が選択された(R2=0.15).また,糖尿病合併有りと無しの群間比較では筋力(kgf/g)は0.22±0.09,0.26±0.09(p=0.002),筋肉量(%)は88.4±25.0,102.7±23.6(p<0.001)であった.
【考察および結論】
高齢HD析患者の筋力と筋肉量は関連を認め,それぞれに影響する要因は異なった.筋力は特に年齢の要因が影響し,筋肉量には栄養が影響する.さらに,糖尿病の合併は筋力と筋肉量の双方の低下に影響する.透析患者では通院継続による活動量低下から生じる筋力低下や透析療法の継続に起因する,尿毒症物質の蓄積,炎症等の影響が筋肉量減少に影響する.筋力と筋肉量はそれぞれ年齢や運動,栄養状態を含め評価する必要がある.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言,臨床研究に関する倫理指針を順守した.また,個人情報の利用は説明と書面への署名で同意のもと実施した.