主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【背景および目的】
歩行時の足底圧の上昇を引き起こす足関節の関節可動域(ROM)制限は、糖尿病(DM)患者において発生頻度が高いとされているが、血液透析(HD)患者における足関節のROMを調査した報告はほとんどない。そこでHD患者を対象に足関節のROMをDMの併発の有無から分析することを目的として本研究を行った。
【方法】
対象は40歳から69歳までの独歩可能な男性のHD患者18名とし、比較対象群として年齢をマッチングさせたDMを有していない健常男性10名を加えた。対象をDMの有無から非糖尿病血液透析患者群(HD群)、糖尿病血液透析患者群(HDDM群)、健常群(C群)の3群に分類した。測定は右下肢としデジタルゴニオメータで他動ROMを足関節底屈、背屈方向で計測し足関節の最大可動範囲を算出して足関節ROM値とした。3群間での比較はBonferroni法を用い統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
足関節ROMはC群が69.1±9.2°、HD群が69.1±14.2°、HDDM群が56.0±8.1°であり、HDDM群はC群、HD群に比べ有意に低値であった。C群とHD群の間に有意な差は認めなかった。
【考察および結論】
HDDM群がHD群よりも足関節ROMが低下していた結果は、DMの影響による足関節ROM制限について報告した多くの先行研究を支持するものであった。HD導入患者においてもDMの併発が足関節ROMの低下に関与していることを示唆すると考えられる。HD患者の潰瘍予防にはDMの有無に関わらず禁煙、運動、フットケアの重要性が指摘されているがDMを有するHD患者の足部潰瘍予防を考える際には、HD療法に由来する足部潰瘍形成リスクとは独立してDMに起因する足関節ROM制限への対応を検討する必要があると思われる。筋力・足関節ROMの改善を目指した運動療法によるROMの改善を目指した理学療法の介入が透析患者においても重要となるかもしれない。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は「ヘルシンキ宣言」を遵守し、対象者には研究の趣旨や内容について文書および口頭で十分に説明し、署名による同意を得て行った。