理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-RS-3-13
会議情報

口述発表
食道癌術前身体機能および活動量が術後長期予後におよぼす影響
吉岡 佑二大島 洋平佐藤 晋角田 茂松田 秀一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【背景・目的】食道癌周術期は,術後合併症予防,早期回復を目的とした術前リハビリ介入が重要であり,先行研究から術前身体機能は短期的な周術期経過に関与することが示されている.しかし長期予後に及ぼす影響は不明であり,長期経過を見据えた場合のリハビリの意義は不明確である.本研究の目的は食道癌術前身体機能および活動量が,術後3年生存率に及ぼす影響を検討することとした.

 

【方法】対象は2009年~2014年に,食道癌手術目的に当院に入院し,リハビリ介入を実施した116例のうち,術前に身体機能の評価を実施できた111例(平均年齢65.2±7.8歳,男性96名)とした.運動耐容能は6分間歩行距離(以下6MWD)にて評価し,上位25%をカットオフとして2群に分類した.身体活動量は日本語版IPAQ Short Versionを用いて平均的な1週間における活動量を調査し,先行研究に基づいて9METs*h/weekをカットオフとして2群に分類した.また6MWD,IPAQともに良好を高体力/高活動群,どちらか一方のみ良好を中間群,どちらも不良を低体力/低活動群の3群に分類した.診療録より術後3年間の生存,死亡を調査し,各群における術後3年生存率をKaplan-Meier法で算出し,Log-rank検定にて群間差を検証した.またCox比例ハザード回帰分析によって年齢,臨床病期で調整したハザード比を推定した.有意水準は5%とした.

 

【結果】術前6MWDは中央値555m(595-485),IPAQは中央値13.6 METs*h/week(34.9-5.9)であり.術後3年間の死亡は25例(22.5%)であった.術前6MWD,IPAQの良否はそれぞれ単独では術後3年生存率には影響しなかった(p=0.20およびp=0.20)が,高体力/高活動群は低体力/低活動群と比較し予後良好であった(調整後ハザード比0.21,95%CI:0.03-0.78,p=0.02).

 

【考察および結論】従来行われてきた術前の呼吸練習,筋力,持久力トレーニングによる運動耐容能の向上とともに,術前から活動性の高い生活を実践することで術後長期予後を改善しうる可能性が示唆された.

 

【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき,研究の内容,目的,方法,生じる不利益,被験者になることをいつでも拒否できること,一度同意した後でも時期に関わらず撤回可能であること,プライバシーは最大限に尊重されることを説明した上で口頭にて同意を得て実施した.

 また評価項目に関しては,通常診療内で測定する検査項目であり,適切なモニタリングや十分な監視下で試行し,有害事象発生が生じないように評価を遂行した.

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top