主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【背景・目的】
肺癌に対する肺切除術後の患者は,手術手技や術後管理の発展,在院日数の短縮によって,早期に自宅退院を遂げている。しかしながら,本患者群が,退院後にどのような身体症状や生活に関連した問題に直面しているかは不明である。今回,肺癌術後患者の退院後の身体症状や生活に関連した問題点を明確にするために,健康関連QOLを指標にその特徴と経時的な推移を調査した。
【方法】
当院呼吸器外科において待機手術予定であり,術前外来診察時より評価が可能であった肺癌患者57例を対象とした(年齢67.3±9.0,男性35例)。評価には,癌患者に特異的な日本語版European Organization for Research and Treatment of Cancer - QLQ -C 30を用い,術前と術後1,3および6ヶ月(1,3,6 POM)の時点で評価を行った。
【結果】
対象者のQOLは,総得点と身体および役割面の機能尺度,倦怠感および呼吸困難,痛み,睡眠障害の症状尺度が,術前と比較して1POMに有意に低下した。これらQOLの総則点や機能および症状尺度の大半の項目は,3POMで術前と同レベルまで回復したが,機能尺度の身体面と症状尺度の倦怠感,呼吸困難は,6POMでもなお,術前値まで回復しなかった。
【考察および結論】
肺癌術後患者のQOLは,身体や役割,倦怠感,呼吸困難,痛み,睡眠において障害を受けやすく,特に階段昇降や長・短距離の歩行など身体活動の質を反映する機能尺度の身体面や倦怠感,呼吸困難は障害が長期化しやすいことが明らかとなった。これらの結果を踏まえると,肺癌術後患者においては,外来によるリハビリテーションの継続など,症状の回復促進に向けた新たな展開の必要性が示唆された。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,長崎大学病院臨床研究倫理委員会で承認された後に実施した(承認番号:12092420-3)。全ての対象者に本研究の目的や意義,倫理的配慮について口頭および文書にて説明を行い,書面にて研究参加への同意を得た。