主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
「背景」
今回,頻回に入退院を繰り返す気管支拡張症患者を計3年半にわたり担当した。最終的には緩和的な介入を行いつつも,積極的な排痰介助により,全身機能の維持が図れ,QOLの維持が図れたため報告する。
「症例」
60歳代女性。X日より感染増悪などにより入退院を繰り返すようになった。X日の評価では,身長:158cm,体重:35.6kg,BMI:14.6,修正MRC:Grade2,BSI(Bronchictasis Severity Index):13点(重症),%VC:52.6%,FEV1.0%:102%,6分間歩行距離:240m(4分で終了)であった。
「結果」
当初は,自己排痰可能であり,全身筋力や耐久性の維持のため,運動療法を中心に実施し,在宅での自主練習を指導した。X+154日頃より,呼吸困難感増悪による運動機能の低下をきたし,排痰不良が顕著となった。そのため,排痰介助などの介入を追加し,本人や家族に対して排痰方法の指導を実施した。また,1日複数回の介入も実施し始めた。入退院を頻回に繰り返したが,本人や家族の自宅退院への強い希望に対して退院支援をそのたびに実施した。X+561日に在宅酸素療法を導入,X+811日にオキシマイザーを導入となった。人工呼吸器は希望されなかった。そして,家族の介護負担の限界に伴い,X+969日に療養型病院へ転院となり,X+1019日に転院先の病院にて永眠された。
「考察」
気管支拡張症は,繰り返す感染増悪のため咳嗽や喀痰が増加し,細菌定着と気道破壊の悪循環を生じるが,排痰介助などが効果的であり,全身機能が維持されたと考えられる。最近の研究では,1日2回の排痰手技を自宅指導した結果,運動機能の変化はないものの,QOLが維持されたと報告され,本研究でも入院中ではあるが,同様にQOLの維持が図れたと思われる。本症例は,孫と過ごす時間の延長を希望されていた。入院は,長期間に及んだが,Needは達成されたと思われる。一方で,入退院の回数が増加する中,本人の症状悪化に対する精神的ケアなどに難渋した。
「倫理的配慮,説明と同意」
本報告は,ヘルシンキ宣言に基づき,個人が特定されないように匿名化し,個人情報保護の扱いには十分に留意した。今回の発表に対し,家族に口頭にて説明し同意を得た。