理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-N-2-3
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口述
rTMSとリハビリテーションの併用がパーキンソン病のバランス機能に及ぼす効果
寒竹 啓太森岡 直輝松﨑 英章大石 優利亜小田 太士髙橋 真紀
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抄録

【はじめに・目的】

当院では、パーキンソン病(Parkinson's disease: PD)の非侵襲的治療として反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation: rTMS)治療を行っている。PDに対するrTMSの臨床効果としてPD患者の運動症状を有意に改善することが報告されている。また脳卒中後の上肢麻痺では、rTMSと集中的作業療法の併用効果が報告されている。PDにおいても脳卒中と同様の効果が期待されており、我々は第14回 日本神経理学療法学会でrTMSとリハビリテーション(リハ)の併用効果について報告し、効果を示した項目の一つとしてバランス機能を挙げた。PDにおけるバランス障害は転倒や骨折、不活動性の促進、ADLやQOLの低下を引き起こす要因であるため、リハによるバランス機能の改善は重要である。今回、バランス機能を静的・動的・総合的バランス機能に分類し、rTMSとリハの併用がバランス機能に及ぼす効果について検討した。

【方法】

対象は平成27年8月から平成30年4月の間にrTMS治療目的で入院した、発症後6ヶ月以上経過しHoehn &Yahr stage(HYstage) Ⅱ〜ⅣのPD患者とした。rTMSは補足運動野に対して1Hz、20分間、週5日、計15セッション施行し、rTMS 直後に理学療法(ストレッチ、筋力増強運動、バランス運動、歩行運動、全身運動等)を60分間実施した。rTMS治療中に抗PD薬の変更はなかった。評価は治療開始前と治療後に行い、総合的バランス機能はBerg Balance Scale(BBS)、動的バランス機能はTimed up & go test(TUG)、静的バランス機能は重心動揺計(ANIMA社製 グラビコーダGP-31)を用いて、30秒間静止立位における総軌跡長、外周面積、前後・左右方向実効値の4項目を測定した。副次評価として日本語版unified Parkinson’s disease rating scale PartⅢ(UPDRS Ⅲ)を測定し、基本属性項目は性別、年齢、罹患期間、HYstage、転倒歴の5項目とした。治療前後の比較はWilcoxon符号付順位和検定を用いて分析した。統計解析にはEZR version1.37を使用し、有意水準は5%とした。

【結果】

対象者は上記基準に該当したPD患者8名(男性5名 女性3名)で、年齢75.9±6.6歳、罹患期間6.1±4.1年、HY stageはⅢ: 6名、Ⅳ: 2名、転倒歴は無: 3名、有: 5名であった。治療前後の比較ではBBSが40.1±14.4点から50.5±6.2点、TUGが18.9±15.2秒から11.8±5.2秒、UPDRS Ⅲが33.5±7.2点から22.9±6.9点と有意な改善を認めた(p<0.05)。また開眼時の前後方向実効値、閉眼時の左右方向実効値においても有意な改善を認めた(p<0.05)。

【考察】

rTMSとリハの併用がPDに及ぼす効果について検討した結果、静的・動的・総合的バランス機能の全てにおいて改善が得られた。これらの結果は、PDの運動療法やその他の治療と同等以上の結果が得られる可能性が示唆された。本研究の限界はバランス機能評価をより細分化して検討していないことや、PDの運動症状等との関連を検討できていない点であり、今後症例数を増やして再検討していく。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は当院倫理委員会で承認を得て、対象者に対する書面および口頭による説明を行い同意を得て行われた。

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© 2019 日本理学療法士協会
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