理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-025
会議情報

口述発表
障害者支援機器の活用及び支援体制構築の活性化に向けた取り組み
-平成28年度、平成29年度障害者総合福祉推進事業(厚生労働省国庫補助金)報告-
渡邊 勧隆島 研吾高松 滋生内山 量史戸塚 満久
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キーワード: 支援機器, 障害者, 支援体制
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抄録

【はじめに・目的】 

日本理学療法士協会では、平成28年度及び平成29年度に厚生労働省国庫補助金事業の「障害者総合福祉推進事業」を受け、障害者が利用する支援機器に関して、その有効性や、活用を促進するための事業を実施している。報告者は協会在籍時にその取り組みを経験し、今回、明らかとなった支援機器に関連する障害者支援の課題について報告する。

【方法】

 平成28年度事業において、全国の市町村(1916箇所)、更生相談所(77 箇所)にアンケートを実施し、支援機器の支給、相談状況、関連する機関との連携状況について調査した。平成29年度事業では、障害の範囲を視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、音声言語機能障害等とし、医療または障害福祉の有識者等で構成される検討委員会で支援機器の普及と活用に向けた取り組みに関する課題について検討した。

【結果】

 アンケート調査では、市町村の回答数は 1,085 件(回答率 56.6%)であった。課題は市町村窓口の専門性不足から、支給決定の困難さがあり、支援機器の導入を円滑に行うための専門的な相談体制、関係機関、関係職種の連携不足、対象者や関連専門職の公費助成制度への理解不足、児童補装具の取扱い、フォローアップの困難さ、業者の見積の問題、修理中の代替品がない等、様々な課題があげられた。更生相談所の回答数は 57 件(74.0%)であった。課題は、マンパワー不足と支援範囲が広いことから、障害者にとって必要なフォローアップが困難であること、リハビリテーション専門職の仮合わせや引き渡し時に関わりが不十分であることがあげられた。平成29年度の事業では、いずれの障害においても、障害者本人や支援する関係者等の支援機器に関する理解が不十分であり、支援機器の普及および有効な活用が求められることが示唆された。また、支援のあり方については、支援機器の普及のみで達成できるものではなく、障害者と支援する関係者間との顔の見える関係づくりや、両者の支援機器に関する理解があったうえで支援機器が有効に活用されることで、支援体制が充実していくものであることが示された。

【結論】

 各自治体及び更生相談所の回答結果から支援機器導入後のフォローアップはほとんど実施されていないことや、不適合のままの利用または使用されぬままであること等の課題があげられた。また、障害者との関わりを通して、支援機器の選択、使用方法、設置、故障や不具合がおこった際の連絡先等について十分に伝えられていない。また、関係機関がそれぞれの組織の枠組みの中でしか介入できないことから、生活課題解決のための支援が十分でないことにつながっていると考えられる。望ましい支援は、適切に支援機器を提供できる体制を構築することである。しかしそれは障害者と支援する人との顔の見える関係づくりがあってこそ成り立つものであり、両者が互いに支援機器に関する知識や理解を深めることが求められる。

【倫理的配慮,説明と同意】

アンケート調査依頼は,目的,意義、情報の取扱いについて記載し,調査票の 返送をもって承認したとみなすことを明示した。調査は無記名で行い、自由意志による調査協力と拒否・中断の自由,調査票記載に要する時間,結果の活用方法について明記した。

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© 2019 日本理学療法士協会
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