理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 2-O-19-2
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一般演題
ラット膝関節固定に伴う全関節構成体および前十字靭帯の力学的性質の変化
金口 瑛典小澤 淳也南本 健吾
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キーワード: 関節固定, 弛緩性, 靭帯
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抄録

【はじめに、目的】関節固定は脱臼や靭帯損傷後に生じる関節の弛緩性増加に対する治療として広く用いられているが、弛緩性軽減効果に関しては否定的な報告が多い。また、関節外骨折など関節内損傷のない関節に対しても関節固定は行われるが、関節全体の弛緩性に対する影響は不明である。靭帯は関節の安定性に寄与する主要な構造であり、関節固定によりスティフネスや破断強度といった力学的性質は減弱することが報告されている。本研究では、損傷のない関節の固定は、靭帯の力学的性質を減弱させるだけでなく、関節全体の弛緩性も増加させると仮説を立て、これを検証することを目的とした。

【方法】8週齢の雄性ラットを22匹使用した。全てのラットの右膝は、キルシュナー鋼線と合成樹脂を用いて屈曲140°で3週間外固定した。無処置の左膝を対照として用いた。実験期間終了後、15匹は力学的解析に用いた。膝関節を摘出し、屈曲90°で万能試験機に固定し、大腿骨に前後各方向に5 Nの力を加え、その時の変位量を全関節構成体の弛緩性として測定した。さらに、大腿骨-前十字靭帯(ACL)-脛骨複合体を作成し、万能試験機を用いて20 mm/minで靭帯が破断するまで伸張し、応力-変位曲線からスティフネス(N/mm)と破断強度(N)を算出した。また、残りの7匹は組織学的解析と遺伝子発現の解析に用いた。固定・脱灰した膝関節から矢状断切片を作成し、アルデヒドフクシン・マッソンゴールドナー染色を行った後、組織学的観察に用いた。パラフィン切片から後方関節包のtotal RNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAを作成した。コラーゲン代謝に関連する遺伝子の発現をreal-time PCRを用いて定量した。固定側と反対側の比較には、ウィルコクソンの符号順位検定もしくは対応のあるt検定を用いた。

【結果】全関節構成体の弛緩性を示す膝前後方変位は、固定側(0.41 ± 0.11 mm)で、反対側(0.30 ± 0.07 mm)と比較して有意に増加した(P = 0.002)。一方で、ACLのスティフネス(固定側22 ± 7 N/mm vs 反対側24 ± 5 N/mm)および破断強度(固定側44 ± 7 N vs 反対側44 ± 4 N)には左右差が認められなかった(P > 0.48)。反対側と比較して、固定側の後方関節包ではCOL3A1遺伝子発現の有意な減少(反対側の43%、P = 0.03)を伴うコラーゲン線維束の菲薄化が認められた。

【結論(考察も含む)】3週間のラット膝関節固定は、ACLの力学的性質を変化させることなく、全関節構成体の前後方向への関節弛緩性を増加させた。この関節弛緩性の増加には、後方関節包の変化が関与している可能性が示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】広島国際大学動物実験委員会の承認を得て行った。

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© 2019 日本理学療法士協会
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