理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 2-O-19-1
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一般演題
変形性膝関節症患者の歩行速度に膝伸展筋力とFunctional Reach Testが及ぼす影響
山本 哲生山崎 裕司山下 亜乃片岡 歩岡田 雄大土居 優仁中内 睦郎
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抄録

【目的】下肢筋力とバランス能力は,それぞれ歩行速度の規定要因として知られているが,2つの機能がどのような相互作用によって歩行速度を規定しているかは明らかでない.今回,変形性膝関節症患者を対象として下肢筋力とバランス能力がどのように歩行速度に影響しているのか検討した.

【方法】対象は60歳以上で変形性膝関関節症を有し,独歩での通院が可能な症例497名(男性47名,女性450名,年齢74.9±6.7歳)である.評価項目は,身長,体重,10m歩行時間(歩行時間),Functional Reach Test (FRT),膝伸展筋力(アニマ社製 徒手筋力計測器μTasF-1)の5項目.膝伸展筋力は左右の平均値を体重で除したものとした.統計方法は,まず重回帰分析を行い歩行時間に影響の強い因子を特定した.次に膝伸展筋力0.10kgf/kgごとに0.20未満群,0.30未満群,0.40未満群,0.40以上群の4群に分類し,各群間で年齢,歩行速度,FRTについてKruskal-Wallis検定およびSteel-Dwass多重比較法により検証した.また各群間で歩行速度1.0m/秒を下回る症例の割合を調査した.最後に歩行速度とFRTの相関係数を求め,各群間で比較検討した.統計解析はR 2.8.1を用い,有意水準は5%未満とした.

【結果】重回帰分析の結果,膝伸展筋力,FRT,年齢が歩行速度を規定する有意な変数であった(p<0.01).0.20未満群(45名,76±7.1歳)の歩行時間は10.07±3.2秒で,FRTは22.6±4.9cmであった.歩行速度1.0m/秒を下回る症例の割合は42%で,歩行速度とFRTの相関係数はr=-0.39であった.同様に0.30未満群(173名,75.5±6.9歳)は,8.89±2.4秒,25.0±5.2cm,21%,r=-0.48(p<0.01)であった.0.40未満群(169名,74.8±6.5歳)は7.86±2.4秒,26.3±5.8cm,11%,r=-0.40(p<0.01)であった.0.40以上群(110名,73.8±6.3歳)は,6.87±1.4秒,28.3±5.6cm,2%,r=-0.33であった.各群間で歩行速度とFRTに有意差がみられ(p<0.01),歩行速度1.0m/秒を下回る症例の割合は膝伸展筋力が高い群ほど低い割合であった.最後に歩行速度とFRTとの関係は0.30未満群と0.40未満群で有意な相関がみられた.

【結論】歩行速度と膝伸展筋力FRTの結果には関係性が認められたが.その関係性は膝伸展筋力に強い影響を受けていた.膝伸展筋力が0.20 kgf/kg以上0.40 kgf/kg未満の場合にはFRTとの相互作用で歩行速度が規定されるが,膝伸展筋力が0.20 kgf/kg未満や0.4 kgf/kg以上の場合はFRTの影響は少ないことが示唆された.

【倫理的配慮,説明と同意】対象者には,研究の目的と計測方法について具体的に口頭で説明し,計測の実施とその結果の研究使用についての同意を得た.

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© 2019 日本理学療法士協会
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