理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 2-O-23-4
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一般演題
高校生における下肢の怪我の発生状況ならびに関連因子について
-Star Excursion Balance Testを用いた検討-
原田 拓田村 将良今井 えりか中根 一憲竹田 かをり奥谷 唯子小杉 直希川島 由暉竹田 智幸渡邊 晶規岡田 誠可知 悟
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キーワード: 高校生, 下肢の怪我, SEBT
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抄録

【はじめに、目的】

高校生の部活動においては下肢の怪我が多いとの報告がある。今回、下肢の怪我の発生状況ならびに関連因子を検討することを目的とした。また、怪我を予測する動的バランス評価としてStar Excursion Balance Test(以下、SEBT)が注目されているため関連因子の一つとして調査したので報告する。

【方法】

対象は現病歴ならびに過去6か月以上既往歴のない、愛知県内の公立高校のサッカー部、体操部、ハンドボール部の男性47名94足(年齢15.6±0.6歳、身長169.6±5.0㎝、体重57.5±5.9㎏)、女性17名34足(年齢15.5±0.6歳、身長158.9±3.6㎝、体重51.5±5.3㎏)とした。

調査はアンケート形式で実施した。調査開始時に一般情報(年齢、性別、スポーツ歴、現病歴、既往歴、身長、体重)を聴取しSEBTの測定を併せて実施した。その後2か月毎に計5回、怪我の発生状況を追跡調査した。SEBTは3方向(前方、後外側、後内側)を選択した。各方向3回の測定の内、最大リーチ距離を採用し棘果長で除して正規化した。

 統計処理は多重ロジスティック回帰分析により、従属変数を怪我の有無とし、独立変数を年齢、性別、スポーツ歴、身長、体重、SEBTの各方向として比較検討した。なお変数投入はステップワイズ法を用いた。SEBTについては同分析により有意差のあるものを抽出しROC曲線によりカットオフ値を求めた。有意水準は5%未満とした。

【結果】

アンケート回収率は98.8%であった。怪我の発生率は29.7%(足関節56.4%、膝関節38.2%、股関節5.5%)、内訳は靭帯損傷27.3%、筋腱損傷20.0%、打撲切り傷16.4%、骨折9.1%、その他27.3%であった。受傷機転はコンタクト32.7%、ノンコンタクト38.2%、オーバーユース3.6%、その他25.5%であった。

 多重ロジスティック回帰分析の結果、χ2検定は有意となり、変数は性別、年齢、競技歴、SEBT(前方)で有意であった(p<0.05)。オッズ比はそれぞれ4.48(95%CI:0.07~0.76)、3.44(95%CI:0.10~0.83)、1.12(95%CI:1.00~1.25)、1.09(95%CI:0.86~0.98)であり、ホスマー・レメショウ検定で適合度は有効であった(p=0.27)。SEBT(前方)のカットオフ値は棘果長に対して105.7%、感度・特異度は0.66と0.57、ROC曲線のAUCは0.63であった。

【結論】

 下肢の怪我は足関節の割合が高く、その多くが靭帯損傷によるものであった。下肢の怪我との関連性はオッズ比より男性であること、年齢が低いこと、競技歴が長いこと、SEBT(前方)が低いことがリスクとして挙げられた。一方、これまでSEBTは怪我の予測する因子として前方リーチ距離の低下が怪我の発生を高めるとの報告があり、先行研究を支持する形となった。しかしAUCは0.63でありSEBTのみで下肢の怪我の発生を予測することは困難であると考えられた。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は当院倫理委員の承認を得た後に、被験者への説明を行い文書にて同意を得たうえでヘルシンキ宣言に沿って実施した。

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© 2019 日本理学療法士協会
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