主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに、目的】
客観的な運動耐容能評価の一つに心肺運動負荷試験がある。その中の指標の一つとして嫌気性代謝閾値(Anaerobic threshold:以下AT)がある。ATは有酸素運動から無酸素運動への転換点であり、ATにおける酸素摂取量が多いほど乳酸蓄積を抑えた運動継続が可能である。またWassermanも運動時、換気量と心拍出量が増加し、活動筋での酸素摂取量が増加すると論じている。そこで今回、ATにおける酸素摂取量と骨格筋の指標として体重支持指数(Weight Bearing Index:以下WBI)について関係性があるか検討した。
【方法】
対象は喫煙歴のない健常男子25名、方法は呼気ガス分析装置(ミナト医科学製エアロモニターAE-310S)を使用し、負荷装置は、KONAMI社製 AEROBIKE 75XLⅢを使用した。プロトコルはRest、Warm-up(定常20W)、Exercise(ランプ負荷20W/min)にて症候限界で終了した。AT測定はV-slope法を用いて決定し、解析値を基準値で除して百分率した値を%ATとした。WBIの評価はBIODEX SYSTEM3(以下、BIODEX)を用い、膝関節屈曲70°肢位で膝伸展筋群等尺性最大随意収縮を測定し、WBIを算出した。また、Biospace社製InBody430を用いて算出した筋質量(%Muscle Volume:以下%MV)に見合った予測WBIを算出、実測WBIが予測WBIを上回る群(以下、Strong群:S群)と下回る群(以下、Weak群:W群)の2群に選別した。統計処理はSPSS Ver.17を使用し、①%ATとWBIの関係性、②ATと%MVの関係性についてはSpearmanの順位相関係数を用い、③S群とW群におけるATの関係性についてはMann-WhitneyU検定を用い、有意水準5%未満とした。
【結果】
①ATとWBIの関係性は中等度の正の相関(r=0.56)が認められ、WBIが高い人ほどATが高い。②ATと%MVの関係性に相関は見られなかった。(r=0.07)③S群とW群におけるATの比較において有意差が認められ(p<0.01)、S群の方がW群と比較してATは有意に高い結果となった。
【結論(考察も含む)】
今回の結果よりWBIが高い人ほどATが高く、%MVに見合った筋出力を出力できているS群は出力できていないW群に比べてATが高いことが分かった。またATと%MVには相関はないことから筋質量と持久力というよりは筋質量に見合った筋出力と持久力に関係性があると考えられる。脇元は「脳の筋緊張制御による出力抑制は安静時筋緊張のコントロールによってなされている」と述べている。つまり、筋出力が抑制されているW群はS群と比較して安静時筋緊張が高く、骨格筋血流量減少に伴い、早期にエネルギー供給系が解糖系優位になる。また、骨格筋への血流量減少に伴い、静脈還流量も減少し、一回拍出量も減少する。そのため、W群はATが低く、S群はATが高い値を示したと考える。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は本校倫理委員会の承認を得て行った(承認番号:1819)。なお倫理的配慮としてすべての被験者に対して研究の主旨および研究協力への自由意志と拒否権を説明し、同意が得られた場合にのみ実施した。