理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1-M-2-5
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ミニオーラル
成人変性側弯症患者の下肢筋量・下肢筋力の左右差について
-Coronal Imbalanceによる検討-
藤井 陽介新保 雄介渡邉 幸勇秋野 佑太保坂 直基佐藤 嘉展江口 和稲毛 一秀豊口 透
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抄録

【はじめに、目的】

 近年、高齢者の変性側弯症は増加傾向である。本疾患は立位時障害や歩行障害を呈しやすくADL、QOLの低下を惹起する可能性がある。三森らは思春期特発性側弯症患者の側弯の程度が体幹・下肢筋力に影響を与えないと報告した。体幹・下肢筋活動量の左右差については他の先行研究おいて一定の見解を得ていない。一方で、成人変性側弯症患者を対象とした同様の研究は渉猟する限り見当たらない。そこで、成人変性側弯症患者の下肢筋量および筋力の左右差とCoronal Imbalance(以下、CI)の関係性を調査することを本研究の目的とした。

 

【方法】

 対象は、当院で変性側弯症と診断された女性のうち、重度の変形性股関節症・下肢神経障害のない患者38名とした。測定項目は下肢筋量と下肢筋力、CIとした。下肢筋量はInbody720(インボディ・ジャパン社製)、下肢筋力はロコモスキャン(アルケア社製)を用いて測定した。下肢骨格筋量(kg)/{身長(cm)}2を下肢骨格筋量指標(下肢skeletal muscle mass index:以下、下肢SMI)とした。CIは全脊柱X線立位正面像にて距離(mm)を測定した。対象者の群分けはShettyらの方法を参考にし、CIが20mm以上の17名(年齢79.4±5.0歳、身長148.1±4.4cm、体重47.5±5.3kg)をCI群、19mm以下の21名(年齢74.4±7.3歳、身長151.0±5.3cm、体重50.0±9.0kg)をNeutral群とした。第7頚椎(以下、C7)の変位側に応じて各対象者の両下肢を変位側と非変位側に分類した。

 統計学的解析は、Shapiro-Wilk検定を実施後、各群内での両下肢SMI・筋力の比較に対応のあるt検定を用いた。両群間の変位側同士、非変位側同士の下肢SMI・下肢筋力の比較には対応のないt検定を用いた。有意水準は5%未満とした。

 

【結果】

 CI群の下肢SMIは有意差を認めなかった。CI群の下肢筋力は変位側:5.65±1.76N/kg、非変位側:5.01±2.10N/kgで有意差を認めた(p<0.05)。Neutral群の下肢SMI・下肢筋力は共に有意差を認めなかった。両群間の変位側同士、非変位側同士の下肢SMI・下肢筋力の比較では有意差を認めなかった。

 

【結論】

 CI群で変位側下肢筋力が有意に大きかった。C7の変位は上半身質量中心をC7変位側に移動させ、下肢の荷重を日常的に不均衡にすると考える。その結果、非変位側下肢の筋活動量は減少し非変位側下肢筋出力の低下を及ぼした可能性があると考える。

 成人変性側弯症患者の下肢筋力の左右差は冠状面におけるC7の変位を助長する可能性があり、継時的変化の調査が必要であると考える。

 

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究にあたり千葉大学倫理審査委員会の承認を得た。対象者に説明を行い、同意を得た。

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© 2019 日本理学療法士協会
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