理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O7-2
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口述
若年者と高齢者における側方ステップ動作開始時の姿勢制御
蓮田 聡峰山本 澄子
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抄録

【はじめに、目的】動作開始時の姿勢制御には,先行随伴性姿勢調節(APA)と呼ばれるものがあり,動作開始時に床反力作用点(COP)がステップ側に変位し,支持脚への重心(COG)移動が起こるとされている.APAは初期重心位置や左右下肢荷重量の違いにより制御が異なると報告があるため,一側下肢を対象とした分析ではなく左右それぞれの運動戦略を分析する必要がある.本研究は,安静立位時の下肢荷重量に着目し,支持脚が高荷重側及び低荷重側となる場合の側方姿勢制御の特徴を,運動学・運動力学的に分析し,若年者と高齢者の前額面上姿勢制御の違いを明らかにすることを目的とした.

【方法】対象は,若年者10名(24.6±2.5歳),高齢者18名(70.8±3.8歳)とした.計測課題は静止立位と側方ステップ動作とした.使用機器は赤外線カメラ8台で構成される三次元動作解析装置VICON(VICON社製),及び2枚の床反力計(AMTI社製)を用いた.静止立位データから荷重率を算出し,50%以上を高荷重側,以下を低荷重側と定義した.側方ステップ動作は最大速度で実施し,ステップ幅を転子下長の50%とし,左右5回ずつ無作為に実施した.解析区間は動き始めから足底離地までとし,左右方向のCOP・COG変位量(%),上部体幹・骨盤中心点の並進移動距離(%)を算出し,左右第5中足間距離で正規化を行った.さらに体幹・骨盤傾斜角度(°)を算出した.側方ステップ動作開始時の比較は,年齢と荷重量の違いを2要因とした二元配置分散分析反復測定法を用いた.交互作用がみられた場合,荷重差の違いで差があるかを,対応のあるt 検定で分析した.交互作用がみられない場合,要因ごとに主効果の有無を確認した.有意水準は5%とした.

【結果】支持脚へのCOG変化量,上部体幹中心並進移動距離に交互作用がみられた.若年者はCOG変化量が高荷重側より低荷重側が支持脚となった場合に増大し,高齢者は上部体幹中心並進移動距離が増大した.交互作用はなかったが,体幹傾斜角,COPステップ側及び支持脚への変化量は荷重量の違い,年齢間に主効果が認められ,骨盤傾斜角は年齢間に主効果が認められた.高荷重側より低荷重側が支持脚となる場合,支持脚及びステップ脚側へのCOP変位量,支持脚への体幹傾斜角度が増大した.また若年者より高齢者の方が,ステップ側へのCOP変位量,支持脚への体幹・骨盤傾斜角度が増大し,支持脚へのCOP変位量は減少した.骨盤中心並進移動距離に主効果はなかった.

【考察】高荷重側と比較して低荷重側が支持脚となる場合,若年者はCOG移動量が大きかった.立位時の初期重心位置から動作開始時のCOG移動量を調整していることが考えられる.高齢者は低荷重側を支持脚とする場合,支持脚への上部体幹中心並進移動距離が増大した.高齢者は体幹の移動や角度変化を増大させることで,COG移動量を調整していることが示唆された.

【結論】若年者は身体の角度変化を小さくして左右下肢に重心を移動するのに対して,高齢者は上部体幹の支持脚への変位量を増大させる戦略を用いることが示唆された.

【倫理的配慮,説明と同意】すべての対象者にはヘルシンキ宣言をもとに,本研究の趣旨を口頭及び紙面で説明し,同意が得られた者のみを対象として計測を行った.尚,本研究は国際医療福祉大学倫理委員会の承認を得て行った(承認番号16-Ig-131).開示すべき利益相反はない.

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© 2019 日本理学療法士協会
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