理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P6-18
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内側開大式高位脛骨骨切り術後患者の術後3ヶ月までの足底圧変化について
ー足底圧測定器を用いた症例検討ー
瀧原 純川上 裕貴玉造 純子
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抄録

【はじめに、目的】足底圧計測は生体力学や生理学的観点だけではなく、整形外科手術の検証にも利用されている。その対象は、踵骨骨折や足関節腱固定、前十字靭帯再建などにわたり、健常被験者と同様な足底圧パターンを回復した例も報告されている。これらの一方で、内側開大式高位脛骨骨切り術(以下OW-HTO)後患者の足底圧についての報告は稀少である。今回、OW-HTO後患者の足底圧変化を明らかにし、より質の高い理学療法を実践する目的で、術後3ヶ月(以下Po3M)にわたり調査した。

【方法】症例は40代女性で、肥満指数は19.2である。201○年○月に誘因がなく疼痛が出現し、他院で左大腿骨内顆骨壊死と診断された。半年後に疼痛が増悪し、当院に手術を目的に入院となった。同月にOW-HTOと軟骨柱移植術が施行され、大腿脛骨角は術前178°から術直後172°に矯正された。膝関節屈曲可動域(単位°)は術前(以下Pre)155、術後1ヶ月(以下Po1M)120、術後2ヶ月(以下Po2M)125、Po3M150であった。筋力は健側差(単位%)でPre77.1、Po1M62.1、Po2M70.0、Po3M83.0であった。疼痛は歩行時痛がNumerical Rating ScaleでPre7、Po1M2、Po2M1、Po3M1であった。荷重は術後2週間toe tatchレベル、術後2週後から1/2部分荷重、術後3週から2/3部分荷重、術後4週から全荷重を開始した。足底圧測定機器は挿入型のPedar System(Novel社/独製)を使用し、サンプリング周波数は50Hzで無線により計測した。測定方法は、静的立位、スクワット、歩行とした。静的立位は20秒保持の中間の10秒を測定し、スクワットは1/4スクワットとし10回行ううちの中間5回を測定した。歩行は快適歩行速度で8mの歩行路を使用し、Schmidtらの方法を参考に開始3歩を除外した中間5歩を抽出した。足底圧に関わるパラメーターとして接地時間の積分値(以下PTI)をそれぞれの各時期の健側差(単位%)で比較した。

【結果】静的立位のPTIはPre・Po1M・Po2M・Po3Mの順に59.2・33.0・50.5・59.3、スクワットのPTIはPre・Po1M・Po2M・Po3Mの順に50.4 32.4・31.6・57.5、歩行のPTIはPre・Po1M・Po2M・Po3Mの順に85.3・21.6・82.0・105.8であった。Po3Mで歩行においては健側差がなくなり、静的立位やスクワットおいては残存していた。

【考察】OW-HTO後の下肢アライメントの変化の影響は足底圧にも及ぶため、足底圧計測を介した評価並びに術後の効果判定はOW-HTO術後の理学療法の質をより高めると考えられる。今回の結果より、各測定方法により健側差の有無および改善時期を考慮したうえで足底圧に及ぶ下肢アライメントの変化の影響を捉える必要性が示唆された。

【結論】OW-HTO後患者の足底圧をPo3Mにわたり調査した。静的立位、スクワット、歩行において健側差の有無および改善時期が異なっていることが明らかとなった。したがって、これらを考慮したうえで足底圧に及ぶ下肢アライメントの変化の影響を捉える必要性が示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】研究はヘルシンキ宣言に基づき行われた。対象者には事前に方法・目的・倫理的配慮を説明し書面にて同意を得た。また、同意の撤回がいつでも可能なことを説明した。

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© 2019 日本理学療法士協会
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