理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O18-6
会議情報

口述
セラピストによる主観的立位動揺評価の信頼性と妥当性
-地域在住高齢者における検討-
石川 康伸平井 達也吉元 勇輝若月 勇輝藁科 弘晃田中 敬大松下 耕三青山 満喜
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抄録

【はじめに、目的】

主観的立位動揺評価は、検者が立位保持をしている対象者の身体動揺を主観的に評価する方法であり、これまでに健常成人や入院高齢者を対象とした研究で信頼性と妥当性が確認されている(林2013、石川2017)。この評価は場所や時間の制限が少ないという簡便さから、病院や施設以外の「地域」において身体動揺を計測する手段として実用的に利用できる可能性がある。しかしながら、対象となる地域在住高齢者の信頼性と妥当性については明らかにされていない。本研究の目的は、地域在住高齢者を対象としたセラピストによる主観的立位動揺評価の信頼性と妥当性を検討することである。

【方法】

対象者は地域在住高齢者24名とした(73.9±3.9歳)。対象者には事前に閉脚立位、タンデム立位、片脚立位の可否を確認し、重心動揺計(アニマ社製、取込周期:20Hz、取込時間:30秒)上で保持が可能な立位をとった。計測は重心動揺検査の方法に則って実施し、同時に対象者の後方から立位をビデオカメラで撮影した。セラピストによる主観的立位動揺評価は、経験年数の異なる理学療法士3名(検者A:1年目、検者B:4年目、検者C:11年目)がビデオ画像により対象者の立位動揺を「0実行不能-10完全に安定」の11段階で2回評価した。解析方法として、検者内信頼性は、1回目と2回目の結果から、検者ごとにCohenのκ係数とKendallのW係数を算出した。検者間信頼性は、検者3名の1回目の結果から、W係数を算出した。妥当性は各検者の1回目の結果と総軌跡長および外周面積との関連をSpearmanの順位相関係数にて検討した。有意水準はすべて5%とした。

【結果】

検者内信頼性は(κ係数/W係数)、検者A(0.24/0.94)、検者B(0.20/0.92)、検者C(0.24/0.93)であった。検者間信頼性についてW係数(0.89)であった。妥当性では、主観的立位動揺評価と重心動揺(総軌跡長/外周面積)との相関係数は、検者A(-0.71/-0.58)、検者B(-0.60/-0.51)、検者C(-0.67/-0.59)であり、すべてに有意な相関が認められた(p<0.001)。

【考察】

検者内、検者間信頼性について、κ係数は「Slight」および「Fair」であったのに対して、W係数は「good」および「great」と判断された。κ係数は変数間の完全な一致を反映し、W係数は大小関係の一貫性を反映する。つまり、各検者がつけた評価には多少の差異は生じているものの、大小関係は大きく異なっていなかったと考える。妥当性について、総軌跡長と外周面積で3名の検者ともに有意な負の相関が認められた。本研究の信頼性と妥当性の結果は、若年者と入院高齢者を対象とした先行研究と類似していた。以上より本評価は地域在住高齢者に対しても使用可能であると考える。

【結論】

地域在住高齢者を対象としたセラピストによる主観的立位動揺評価は、良好な信頼性と妥当性を有し、検者の経験年数に関係なく使用可能な評価であることが示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】

すべての対象者に、事前に研究の趣旨、内容および個人情報の取り扱いに関して口頭および書面にて説明し、署名にて同意を得た。本研究は常葉大学倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:2017-005H)。

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© 2019 日本理学療法士協会
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