理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O19-1
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口述
Kinectを用いた立位姿勢分析
〜着衣下での信頼性の検討〜
田島 慎也原野 達也西原 翔太森本 将司吉里 雄伸二宮 省悟
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キーワード: Kinect, 信頼性, 立位姿勢分析
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抄録

【はじめに、目的】

近年,臨床での簡易的な3次元動作解析装置のツールとしてMicrosoft社のKinectが注目されている.Kinectは赤外線を利用したセンサーであり,身体において自動的に25の関節点の3次元座標が抽出できる.また反射マーカーの貼付やボディースーツ(以下,スーツ)は不要で測定が可能である.しかし,Kinectによる身体の測定に着衣が及ぼす影響は不明である.そこで今回は,臨床での動作分析の利用に向けた基礎研究として,着衣の有無によるKinectを使用した立位姿勢分析の信頼性について検討することを目的とした.

【方法】

対象は健常男性11名(年齢23.1±2.4歳,身長173.2±6.7cm,体重72.6±13.5kg).対象者から距離2.5m,高さ0.75mの位置にKinectを設置し前額面から測定した.対象者は膝関節と足関節が露出したスーツを着用し,その上から下肢を動かさずに着脱可能なサイズの大きいジャージを着用した.測定はジャージの状態で静的立位を10秒間測定し,次にスーツの状態で静的立位を10秒間測定した.測定はそれぞれ2回繰り返した.ジャージが影響を与える可能性のある腰部中央,左右の股関節,膝関節,足関節の3次元座標を抽出し,ジャージおよびスーツの測定値を比較した.全てのデータは正規性を確認後,相対信頼性として級内相関係数(以下,ICC)を用い,ジャージ条件とスーツ条件の再現性と一致度を検討した.また絶対信頼性としてBland−Altman分析を用いて検討した.統計にはSPSS Statistics 19を使用した.

【結果】

再現性の検討においてジャージ条件とスーツ条件のICC(1,1)はどちらも0.97以上であった.一致度の検討において腰部中央,左右の股関節,膝関節xz座標,足関節xz座標のICC(2,1)は0.85〜0.99,左右足関節y座標では0.57〜0.58,左右膝関節y座標では0.34〜0.37となった.また全てにおいて系統誤差は認められなかった.

【考察】

ジャージ条件とスーツ条件の3次元座標抽出の再現性はどちらもICC0.97以上であり,Landisらの判定基準に基きalmost perfectであった.一致度に関しては,腰部中央,左右の股関節,膝関節xz座標,足関節xz座標において0.85〜0.99とalmost perfectを認めたが,左右足関節y座標は0.57〜0.58とmoderate,左右膝関節y座標は0.34〜0.37とfairであった.Kinectの赤外線を利用したデプスセンサによる骨格追跡のアルゴリズムの詳細は一般公開されていない.今回の結果より,対象者の骨格が不明確な場合は膝関節や足関節のy座標に影響を及ぼすことが示唆された.臨床でKinectを使用する際は,膝関節と足関節を露出させることで信頼性の高い客観的評価ができる可能性がある.またKinect内での再現性は高いため,同一被験者の経時的変化を捉えることは可能と考えられる.

【結論】

Kinectを用いた立位姿勢分析では,着衣により膝関節と足関節のy座標に測定誤差が生じることが考えられるが,測定時の工夫で信頼性が向上する可能性がある.

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は所属施設の倫理審査委員会の審査を受けて実施した(承認番号:28−029).対象者にはヘルシンキ宣言に基づき本研究の内容を十分に説明した後,書面にて同意を得た上で実施した.また本研究において,開示すべき利益相反関係にあたる企業はない.

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© 2019 日本理学療法士協会
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