主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに】重症心身障害児や医療的ケア児を在宅で支援するために、訪問のリハビリテーション(リハ)の必要性が高まっている。また、訪問介護、通園・通所などのサービス拡充も求められている。しかし訪問のセラピスト(訪問リハ)、児童発達支援センターや放課後等デイサービスなどに勤務する職員(地域ケアスタッフ)とも、重い障がいや医療的ケアには不慣れであり、子どもの対応に難渋することが多い。小児のリハ・支援を進展するためには、それぞれの課題を明らかにし、具体的な解決法を見出す必要がある。
そこで、我々は、訪問リハ、地域ケアスタッフを主な対象とし、研修会をそれぞれ開催した。研修は講義、実技に加え、「小児のリハ・支援で困っていること」をテーマとしたグループワークを行った。本研究では、得られた意見を分析し、研修に求められるニーズや内容を検討することを目的とした。
【方法】
対象:訪問リハ24名(PT19名、OT4名、ST1名)。地域ケアスタッフ17名(介護職12名、児童指導員、看護師、PT、ST、保護者;各1名)。
方法:
グループワークで得られた意見を分析した(訪問リハ:139、地域ケアスタッフ:92)。UserLocal社のテキストマイニングツールを使用し、品詞別の単語頻度解析、共起頻度解析を行った。さらに両者の比較を行った。
【結果】
訪問リハ:名詞は、「情報」、「関係」、「発達」、「家族」、「対応」の順に多かった。動詞は、「できる」、「関わる」が多く、形容詞は、「少ない」、「難しい」が多かった。共起関係は、「リハ」・「関わる、小児」、「ケース、小児」・「関わる、少ない」の頻度が多かった。
地域ケアスタッフ:名詞は、「本人」、「姿勢」、「介助」、「方法」、「移乗」の順に多かった。動詞は、「できる」、「動かす」が多く、形容詞は、「強い」、「良い」が多かった。共起関係は「できる」・「姿勢、本人」、「姿勢」、「良い、本人」などの頻度が多かった。
単語の出現頻度:「方法」、「対応」、「ポジショニング」などは両者に共通して多くみられた。「情報」、「病院」などは訪問リハのみ、「移乗」、「緊張」などは地域ケアスタッフのみにみられた。
【結論】訪問リハは、「情報」という単語が最も多く、個々の意見から、子どもの疾患や医療的ケアなどの把握が難しいことが要因ではないかと思われた。また、「関係」、「家族」、「対応」という単語も多く、家族との関係や対応にも苦慮していることが推察された。地域ケアスタッフは、「姿勢」という単語が最も多く、「介助」、「移乗」、「抱っこ」などの日常ケアにかかわる具体的な単語も多かった。子どもが示す筋緊張や動作パターンは多様であり、個別の対応が求められるためではないかと思われた。
今後は、小児リハの基本的知識・技術を伝えるとともに、職種や職域による個別のニーズを捉えて、研修の内容を検討していきたいと考える。
【倫理的配慮,説明と同意】研究を行うにあたり、最新の「ヘルシンキ宣言」「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」等を遵守した。研究の情報収集は対象者の同意を口頭で得てから行った。データの取り扱い(情報の保護・入手・保管・破棄)について、プライバシーの保護に努め、本研究で得られた全てのデータは匿名化による管理を行い、個人が特定できないようにした。資料およびデータは、研究実施者(長島史明)が漏洩、盗難、紛失等が起こらないように、自施設の施錠できる場所にて厳重に管理した。本研究により得られたデータをエクセルファイル、ワードファイルなどで再構築を行い、USBメモリに保存、コンピューター上には保存を行わないようにし、情報保護の実施、情報漏洩の防止をはかった。公表にあたり、統計的な結果を中心に記述し、個人情報の開示は行わないよう努めた。