主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに】 Constraint-induced movement therapy(CI療法)は脳卒中慢性期の片麻痺患者の上肢麻痺に対するリハビリテーションとしてエビデンスが確立されている。また近年では、装具やボトックス、電気刺激療法とCI療法の併用も検証されており、従来の運動療法との併用よりも機能向上が認められている。小児領域においても、脳性麻痺リハビリテーションガイドライン(第2版)にてCI療法はグレードAだが、本邦で小児の実施報告は少ないため実践報告を積み重ねる必要がある。
CI療法は、①麻痺手による量的訓練②反復的課題指向型訓練③機能回復を実生活へ反映させる戦略(Transfer package:TP)上記3つのコンポーネントから成り立っている。③TPは、CI療法の効果を高める技法として提唱されている。対象者に麻痺側上肢の現状の理解と問題点の解決を促し、日常生活動作における麻痺側上肢の使用頻度や動作の質を向上させる方略であるが、小児での導入例は少ない。
今回、母親にTPを用いながら親子入園中の脳性麻痺児に対しボトックスを併用した修正版CI療法(mCIMT)を実施したので、その方法と介入効果を報告する。
【症例・方法】 症例は5歳3ヶ月の男児、疾患は脳室周囲白質軟化症で左上肢優位の痙直型四肢麻痺を呈していた。今回は非麻痺手を右上肢とした。GMFCSはレベルⅢ、MACSはレベルⅣ、発達指数はIQ64であった。評価は筋緊張評価のModified Ashworth Scale(MAS)、随意運動発達検査、Box & Block Test(BBT)、Pediatric Motor Activity Log(PMAL)、行動評価(ビデオ撮影)を実施した。母親と8週間入園する親子入園中に、A-Bデザインで介入を行った。A期開始日-11日にボトックスを左大胸筋・左大円筋・左上腕二頭筋・左母指内転筋に施注した。A期は通常の上肢に対する運動療法(1日40分)を行い、B期はmCIMTを週5日、2週間実施した。mCIMTは右上肢を1日30分巾着にて拘束し、左上肢の使用や両手動作を促す課題指向型訓練を1日40分の作業療法の時間に実施した。母親には左上肢で行ったことを日記として毎日記録を依頼した。
【結果】 A期では各評価において臨床的に意味のある変化は認めなかった。B期終了後、MASに変化は認めなかったが随意運動発達検査、BBT、PMALの使用頻度(AOU)と動作の質(QOM)において向上を認めた。行動評価においても体幹機能の向上とともに上肢の自由度も増え、代償動作が減少したことでつまみやスピードの向上を認めた。またmCIMT終了後一ヶ月の時点で、BBTはB期終了時の機能が維持され、PMALはAOUとQOMいずれも向上を認めた。
【考察】 小児期において、本人の興味や認知面、注意力など配慮する点が多い中でも工夫することでmCIMTの実施が可能であり、上肢機能の向上がみられた。母親へのTPの導入を通して、麻痺手の使用頻度や動作の質の向上を母親が実感し、退院後の実生活場面での麻痺肢の使用を更に促進し長期的な改善に繋がったと考える。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究発表を行うにあたり、対象者とご家族に口頭と書面にて説明をし、本研究発表以外では使用をしないこと、それにより不利益を被ることはないことを説明し、回答をもって同意を得たこととした。本演題発表に関連して開示すべき利益相反関係にある企業等はありません。