理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-2(1)-3
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ポスター発表
脳性麻痺児の移動能力は歩行能力評価尺度でどのくらい評価できるのか
樋室 伸顕西部 寿人
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キーワード: 脳性麻痺, 移動能力, 評価
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抄録

【はじめに、目的】脳性麻痺児・者の移動能力低下は、身体活動量低下や参加制約などの原因となる。移動能力への理学療法介入の評価では歩行能力評価尺度が多く用いられる。歩行のcapacityを評価する歩行機能評価法と、日常生活上のperformanceを評価する歩行遂行能力評価法があるが、それらで移動能力をどのくらい評価できるのか明らかでない。本研究は、脳性麻痺児の移動能力と歩行能力評価尺度の関係を検証することを目的とした。

【方法】Gross Motor Function Classification SystemレベルI、II、IIIの歩行可能な脳性麻痺児71人(男47人、女24人、平均年齢12.6歳)を対象とした。移動能力は日本語版Fuctional Mobility Scale(FMS)を用いて家の中(5m)、学校(50m)、地域(500m)の3つの距離で評価した。歩行機能評価法として1分間歩行テストとTimed Up and Goテスト(TUG)、歩行遂行能力を日本語版ABILOCO-Kidsで評価した。FMSの移動能力によって歩行能力評価尺度に違いがあるのかKruskal-Wallisの検定、その後の検定としてDunnの方法で3つの距離ごとに検証した。さらにFMSと歩行能力評価尺度の関係を多項ロジスティック回帰分析で3つの距離それぞれで検証した。目的変数をFMSのスコア、説明変数をモデル1では歩行機能評価(1分間歩行テストとTUG)、モデル2ではモデル1+歩行遂行能力評価(ABILOCO-Kids)とした。モデルの選択規準として赤池情報量規準、モデルの適合度の指標としてCox & SnellのR2値、NagelkerkeのR2値、McFaddenのR2値を用いた。

【結果】FMSの移動能力によって、すべての歩行能力評価尺度に有意な違いが見られた。1分間歩行テストは独歩と車椅子の間、TUGは独歩と杖歩行の間と独歩と車椅子の間、ABILOCO-Kidsはどんな床面でも独歩可能とやや困難だが独歩可能の間、独歩と杖歩行、独歩と車椅子の間で有意差が見られた。多項ロジスティック回帰分析ではFMS5mでは準完全分離が見られたが、FMS50m、500mの距離において、モデル1、モデル2の順に赤池情報量規準は小さい値となり、モデルの適合度はモデル1では28%〜62%、モデル2では42%〜75%であった。

【結論】1分間歩行テスト、TUG、ABILOCO-Kidsは脳性麻痺児の移動能力の違いを評価できることがわかった。さらにこれらを組み合わせることで移動能力をより詳細に評価できた。移動能力の評価は、歩行機能の評価だけでなく、歩行遂行能力の評価と組み合わせて行うことが必要である。

【倫理的配慮,説明と同意】本研究は、当該施設倫理審査委員会の承諾を得て実施した。対象者と保護者には研究説明書を用いて研究目的・方法、研究参加棄権で不利益を受けないこと、個人情報の保護等について説明を行い、同意書の署名をもって研究参加の承諾とした。

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© 2019 日本理学療法士協会
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