日本口蓋裂学会雑誌
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シンポジウムII
口蓋裂の言語領域におけるこだわりの治療
國吉 京子山本 一郎楠本 健司
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2013 年 38 巻 1 号 p. 62-70

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抄録

筆者は言語聴覚士(以下ST)として口蓋裂診療に参加し,1)チーム医療の一員,2)STの立場における鼻咽腔閉鎖機能の正確な診断と治療技術の向上,3)構音指導法の研究,の3点にこだわってきた。今回は口蓋裂言語(Cleft Palate Speech)にたいするSTとしてのこだわりを以下のように報告した。
(1)われわれは,口蓋裂例の正常構音習得時期を研究してきた。正常構音習得に必須の良好な鼻咽腔閉鎖機能とは,無声破裂子音の構音に必要な口腔内圧を上昇し得る能力で,われわれは,一般の幼児も習得の早い無声破裂子音[p]の構音時期を調べた。その結果は,唇裂口蓋裂例が幼児期初期の良好な構音発達能力,すなわち口腔内圧を上昇し得る能力の習得に術後1年から1年6ヶ月を要し,[p]の構音は習得の指標となることを示唆している。従って構音指導が必要な場合,この能力の習得を評価し,その後は正常な構音発達の順序に即した指導を基礎におく。
(2)当院の鼻咽腔閉鎖機能不全に対する治療プログラムを,構音時側方頭部X線規格撮影検査(以下セファロ検査)を中心に紹介した。検査結果を計測し鼻咽腔の形態比と軟口蓋の運動性の結果をもとに閉鎖機能とことばを総合的に評価,診断し,医師が治療方針を決める。鼻咽腔の形態比1.1以下は手術適応となる。
(3)セファロ検査の結果軟口蓋の運動性が悪い例は構音指導を試み,定期的に指導効果を検査で評価する。STとして指導法にこだわり,(1)軟口蓋挙上装置(PLP)を装用した指導,(2)音声障害の治療法をきっかけとしたチューブ法を用いた指導,を紹介した。

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© 2013 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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