日本口蓋裂学会雑誌
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シンポジウムI
地方における多施設間チームによる口唇口蓋裂診療
杠 俊介藤田 研也近藤 昭二松尾 清野口 昌彦山田 一尋倉田 和之内田 春生水野 均小幡 明彦砂原 佳子丸山 公子小嶋 勤中村 康洋影山 康子山口 哲也木次 朝日深沢 裕文土屋 直子上島 佑佳里中村 さつき
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2013 年 38 巻 1 号 p. 7-14

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抄録

【目的】医療圏の面積が広く,居住地域が散在する長野県近隣では,多施設間連携を強くすることで口唇口蓋裂のチーム医療を展開してきた。われわれの取り組みの推移と課題について報告する。
【方法】圏内のすべての患者が1時間以内で通院できるように,長野県の4地域(北,東,中,南)と山梨県の1地域に,入院手術を行う基幹施設を置き,1~2ヶ月に1回専門外来を開設。言語聴覚士,矯正歯科医,耳鼻科医による通院治療は各地域の医療施設にて行った。各専門家同士を結び付ける手段と場として以下の取り組みを行った。1998年,圏内の各分野の専門家が集う学会形式の研究会を発足し同時にメーリングリストを作成した。2003年,多施設共通の診療連絡手帳と情報公開のためのホームページを作成。大学間合同カンファレンスを3から5ヶ月に1回行った。
【結果】本チームによる総診療患者は1067名。学会形式の研究会は2006年まで毎年行われた後,一時期休会し2012年に簡単な講演会交流会形式で再開した。メーリングリストは会員の異動に伴う更新が困難で限定的に使用された。診療手帳は継続した。ホームページは主に患者家族への教育に用いられた。各専門家同士を結び付ける様々な取り組みを10数年継続することで,地域に密着した専門家との間には相互理解と共通見解を作り出すことができた。
【考察】多施設間チーム医療には,連携を強くするためのネットワークを整えることが重要である。従来の形式的な診療情報提供書に加えて,手帳,電話,メール,カンファレンス,研究会,ホームページなどあらゆる情報交換手段を用いるべきであるが,手間のかかる方法を維持するには困難も伴う。一時的でも集中的に情報交換と交流を図ることができ,専門家同士の信頼関係を築くことができれば,その後の情報交換は簡略化でき,円滑なチーム医療が実践できる。異動の多い専門家との簡単な連携の維持が今後の課題である。

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© 2013 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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