抄録
顎裂部への骨移植が困難と考えられた広範な顎裂を有する両側性口唇口蓋裂患者に対し,頰骨インプラントを用いて咬合再建を行ったところ,良好な結果が得られたのでその概要を報告する。
患者は49歳,女性。他施設にて口唇形成術,口蓋形成術,鼻口唇修正術を受けたが,顎裂ならびに口蓋瘻孔の処置は放置されていた。義歯の不適合による咀嚼障害を主訴として2010年2月,当科初診となった。
上顎の多数歯欠損,義歯の維持歯である左側中切歯の動揺を認め,広範な顎裂ならびに鼻口蓋瘻を認めた。顎裂部骨移植による瘻孔閉鎖は困難と診断し,頰骨インプラントならびに歯科インプラントを用いた補綴治療を計画した。手術は経鼻挿管全身麻酔下に上顎臼歯部へ歯科インプラント,上顎小臼歯部より頰骨へ頰骨インプラントを埋入し,埋入後6ヶ月目にアバットメント連結術を行い,仮義歯を装着した。その後,咬合調整等を繰り返し行った。インプラント植立後18ヶ月経過して仮義歯と周囲組織との適合および咬合状態が良好となったことを確認後,バーアタッチメントによるインプラント支持補綴装置を装着した。その結果,咀嚼ならびに言語機能は改善された。
以上のことから,従来の補綴治療が困難な口唇口蓋裂に対しては,頰骨インプラントを適用したインプラント支持補綴装置は言語,咀嚼機能を改善する上で有用であると考えられる。