運動疫学研究
Online ISSN : 2434-2017
Print ISSN : 1347-5827
二次出版
地域在住高齢者を対象とした包括的介護予防プログラム:クラスター無作為化比較試験
Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscleに掲載された英語論文の日本語による二次出版
渡邊 裕也 山田 陽介吉田 司横山 慶一三宅 基子山縣 恵美山田 実吉中 康子木村 みさかKyoto-Kameoka スタディグループ
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電子付録

2021 年 23 巻 1 号 p. 92-106

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抄録

背景:長寿社会において,最も深刻な社会問題の1つにサルコペニアおよびフレイルがある。高齢者の自立と生活の質を維持するためには,これらを予防することが重要である。本研究では,地域在住高齢者を対象に,自己管理式の包括的介護予防プログラム(Comprehensive geriatric intervention program; CGIP)が身体機能および骨格筋量に及ぼす効果を調査した。我々は,CGIPを自宅で実施する群(自宅型)と自宅での実施に加えて週に1度の集団指導を行う群(教室型)の介入効果を比較した。

方法526名の参加者を,居住地区に基づいて2群(教室型251名,自宅型275名)のいずれかに無作為に割り付けた。低負荷レジスタンストレーニング,身体活動量の増加,口腔機能の改善,栄養ガイドで構成されるCGIP12週間実施した。参加者全員に,プログラムの説明を含む90分の講義を2回受講するよう促した。参加者にはトレーニングツール(3軸加速度計内蔵活動量計,アンクルウエイト,ゴムバンド)と日誌が提供された。教室型介入群は毎週90分のセッションに参加し,その他の日には自身でプログラムを実施した。一方,自宅型介入群はプログラム実施方法の説明のみを受けた。12週間の介入前後に,膝伸展筋力,通常および最大歩行速度,Timed up and go(TUG)テスト,大腿前部筋組織厚などの身体機能を測定し,Intention-to-treat法を用いて分析した。

結果526名の高齢者のうち,517名(教室型:243名,74.0±5.4歳,女性57.2%,自宅型:274名,74.0±5.6歳,女性58.8%)が研究対象として組み入れられた。9名(教室型8名,自宅型1名)は介入前の測定に参加していなかったため,解析から除外された。いずれの介入も膝伸展筋力(教室型18.5%,自宅型10.6%),通常歩行速度(教室型3.7%,自宅型2.8%),大腿前部筋組織厚(教室型3.2%,自宅型3.5%)を有意に改善した。なお,膝伸展筋力は教室型でより大きな改善が認められた(P=0.003)。最大歩行速度(教室型4.7%,自宅型1.8%,P=0.001)およびTUGテスト(教室型-4.7%,自宅型-0.2%,P<0.001)は教室型介入群のみで有意に改善した。

結論:本介入プログラムはサルコペニア,フレイルの予防に有効であった。両介入後,ほとんどの身体機能と大腿前部筋組織厚は改善した。自型介入は費用対効果が高く,大規模高齢者集団におけるサルコペニア,フレイルの予防に貢献できるかもしれない。

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