日本口蓋裂学会雑誌
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原著
複数回の手術を受けた口唇裂・口蓋裂児の体験
松田 美鈴中新 美保子西尾 善子古郷 幹彦
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ジャーナル 認証あり

2016 年 41 巻 1 号 p. 17-23

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抄録

【目的】本研究は,複数回の手術を受けた口唇裂・口蓋裂児がそのことをどのように感じながら治療を受けているかについての体験を明らかにし,患児や家族の治療環境を改善していく基礎資料にすることを目的とした。
【対象】中学生8名,高校生4名の12名であった。内訳は男子7名,女子5名,裂型は唇顎口蓋裂10名,口唇裂2名,総手術回数は3回から7回であった。
【方法】複数回の手術を受けた子どもの体験について半構成面接を行い質的帰納的に分析した。「体験」は,子どもが手術を受けた際の印象に残る出来事と心身の状態と定義した。
【結果】体験として,《いつもあった手術への不安や恐怖》《よくなりたいという期待》《手術直後の痛みと様々な制限がある不自由さ》《医療者の対応と母親・友達の支えで頑張った》《自責の念をもつ母への気づかい》《いじめやからかいに対処する難しさ》《生まれつきだから病気は特別なこととは思っていない》 《何度もの手術は仕方ない》の8つのカテゴリーが抽出された。
【考察】医療者は,複数回の手術が続く最初の体験がその後の様々な場面に影響することを考慮し,子どもに詳細な説明やケアを行うことが求められる。そのためにプリパレーションやディストラクションを効果的に取り入れていく必要がある。また,子どもは母親が自責の念を抱いていること知り,望まない手術を受け入れていた。児の疾患が判った早期からの母親への受容支援が重要である。さらに,子ども自身がどのように病気に向き合っていくかが重要であり,そのためには子ども自身のセルフケア能力を高めるような支援が課題となる。
【結論】医療者は複数回の手術を受ける本疾患の子どもたちの特徴を理解し,子どもが手術に主体的に取り組めるように治療環境を整える必要がある。

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© 2016 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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