抄録
Robin sequenceは胎生期の下顎発育不全に由来する二次的な舌根沈下・気道閉塞などを呈する多発異常連鎖パターンであり,その結果もたらされる呼吸困難が出生時から最も危険な問題となる。今回われわれは高度の気道狭窄に対して6歳で下顎骨切り延長術を施行し生後初めて発声が可能となった症例を経験した。
症例は6歳の女児,在胎34週0日,1890gで出生の双胎二子。出生時より気管内挿管での呼吸管理で,生後2ヶ月時に気道狭窄に対して気管切開術を施行となった。その後,小顎症に対して外科的治療をなされることなく経過した。骨延長を含めた今後の治療目的に当院を紹介となった。臨床所見からGoldenhar症候群を原疾患としたRobin sequenceと診断した。頭頸部CTでは下顎骨の著明な低形成及び欠損,高度の舌根沈下及び気管切開部周囲に著明に増生した肉芽様組織による気道狭窄を認めた。3Dモデルを作成し術前検討を行い,両側下顎体部骨切り延長術を施行した。術後4日目から1mm/日で骨延長を開始した。術後18日目(延長終了時)にカニューレ外孔部閉鎖時に発声を認め,術後23日目に初めてスピーチカニューレへの変更が可能となり言語訓練を開始した。CT画像上骨延長部の骨形成を確認のうえ,骨切り術後7ヶ月目に抜釘した。骨切り術後10ヶ月(抜釘術後3ヶ月)経過時点では延長部位の後戻りは認めることなく経過している。
次の目標は気管切開からの離脱(抜管)であるが,6年間使っていなかった声帯や呼吸筋を鍛えるにはまだ時間を要し,気管切開からの離脱に至るには更なる年月がかかり,慎重に行わなければならないと考えている。またそのためには再度骨切り延長術もしくは骨移植術を要する可能性も考えている。