抄録
21trisomyは最も頻度の高い染色体異常の一つであるが,口唇口蓋裂を伴うことは稀である。今回我々は,重度の呼吸障害を認める21trisomyを合併した左側口唇口蓋裂児に対し,Hotz床の装着により呼吸障害の改善がみられた症例を経験したので報告する。
患児は生後22日の男児。主訴は哺乳障害であった。父30歳,母27歳の第2子として,在胎38週3日,経膣分娩にて3220gで出生した。出生時,左側口唇口蓋裂ならびに新生児一過性多呼吸を認め,5日間NICUにて人工呼吸管理された。また,染色体検査にて21trisomyと診断された。日齢22日に口唇口蓋裂の加療目的で当センターへ紹介となった。初診時,Hotz床作製のため印象採得を行った。呼吸状態が不安定であったため,入院管理下に哺乳指導を行った。Hotz床を装着したところ,装置により舌位が安定し徐々に呼吸状態の改善を認め,経口哺乳も可能となったため退院となった。
本症例では,Hotz床の装着により舌が前方位で安定したことにより舌根沈下が改善され,呼吸状態が改善したと考えられた。このようにHotz床の装着は口腔内環境に大きな変化をもたらすため,症例によっては装着により一時的に呼吸状態を悪化させる可能性もあり,装着時の十分なSpO2モニター等による呼吸管理が必要であると考える。