抄録
昭和51年4月1日より昭和59年3月31日の間の過去8年間に当科に入院の上,形成手術を行なった唇裂口蓋裂患者729例について臨床統計的観察を行ない,次の結果を得た.
1 当科において入院し,手術を行なった症例1932例中,形成手術を施行した唇裂口蓋裂患者は,729例(42.1%)であった.
2 地域分布は,札幌市を中心とした石狩支庁が33.7%を占めていた.
3 出産時の母親年齢は,最底19才から44才にわたっていたが,25才から29才台が最も多くみられた.
4 唇裂口蓋裂患者の母親の流死産頻度をみると,自然流産経験者が12.6%,人工流産経験者が9.6%であった.
5 家系内発現をみると,500家系中33例(6.6%)に認められ,口蓋裂単独に最も多くみられた.
6 合併奇形は,500例中97例(19.4%)にみられ,舌小帯強直症が最も多く認められた.
7口唇裂一次形成手術法は,三角弁法またはその変法が主体をなしていた.
8口蓋裂一次症例の手術法は,昭和55年度以来,従来行なわれていた粘膜骨膜弁後方移動術(いわゆるpushback法)に変えて,骨膜上切離粘膜弁法を採用している.