症例は23歳の女性である.4歳時からアトピー性皮膚炎,小学生時から気管支喘息に罹患していた.200X年7月に歩行障害,下肢感覚異常,膀胱直腸障害を急激に発症し入院した.神経学的所見では,下肢筋力低下,下肢の温痛覚と位置覚障害,下肢腱反射低下ないし消失,および弛緩性の膀胱直腸障害をみとめた.入院時のMRIでは,円錐上部の腫脹がみとめられ,髄液検査では細胞・蛋白・IgGは正常であったが,IgE(8IU/ml)とMBP(7.8ng/ml)は高値であった.血液検査ではダニ特異的IgEが強陽性であった.以上の所見からアトピー性脊髄炎と診断した.入院後,ステロイド・パルス療法と血漿交換療法で臨床所見は改善した.第21病日以降に施行されたMRIでT2強調画像にて高信号を示す散在性病変が腰髄∼仙髄レベルに確認された.髄液と血液のIgEおよびアルブミンの測定結果から,IgE髄内産生の可能性が示唆された.髄液IgEを経時的に測定したが,病勢との相関は明らかでなかった.本例のような病巣部位と急性の経過は従来の報告に比し,非典型的と考えられた.