2010 年 50 巻 5 号 p. 311-314
症例は24歳女性である.急性の発熱と頭痛,意識障害にて入院した.齲歯から続発した前頭洞炎,および上顎洞炎,さらに硬膜下膿瘍へと進展した細菌性髄膜脳炎と診断したが,脳脊髄液や膿瘍からの塗抹染色検査では起因菌は検出できず,培養でも同定することができなかった.16SリボゾーマルRNAの遺伝子解析により,口腔内常在菌であるPorphyromonasとFusobacteriumとが同定された.緊急開頭による洗浄術をおこない,より適切な抗菌薬を選択することができた.硬膜下膿瘍はときに急激に拡大するため,外科療法の機会を逸することのないよう留意するとともに,細菌の同定においては,迅速な結果の期待できる遺伝子解析を積極的に活用すべきと考えられた.