2010 年 50 巻 9 号 p. 666-668
右小指球の感覚障害で発症,その後第2病日には鷲手,さらに第3病日には右上肢全体の筋力低下へと進行した脳梗塞の63歳男性を報告する.頭部MRIでは,左大脳半球半卵円中心の前大脳動脈・中大脳動脈境界領域に散在する梗塞巣をみとめ,その一部は手の運動領域であるprecentral knobの内側をふくんでいた.頸動脈エコーおよび頸部MRAでは左内頸動脈に高度の狭窄と不安定プラークをみとめた.手指の一部に限局した運動・感覚障害を呈する脳梗塞は,Roland動脈終末枝の塞栓性機序だけでなく,単麻痺へと進行しうる血行力学性機序によるものがあり,その病因の一つとして内頸動脈のアテローム性変化が重要である.